○ 還付請求法人税額
=還付所得事業年度(欠損金額が生じた事業年度の前事業年度)の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額/還付所得事業年度の所得金額)
(注)欠損事業年度の欠損金額は、還付所得事業年度の所得金額を限度とします。
簡単に言えば、
「前期は黒字であり法人税を支払っていた中小企業が当期において赤字に転落した場合、前期において支払った法人税(の一部)の還付を受けることができる」ということです。
Ⅲ.地方税(住民税・事業税)の取り扱い
上記の欠損金の繰り戻し還付制度は法人税に関してのみであり、地方税において還付は認められていません。
ただし還付を受けることはできませんが、申告書上において必要事項を記入することにより、当期に発生した欠損金額を翌年以降へ繰り越すことができます。
Ⅳ.税務調査の可能性
税務署長は、還付請求書の提出があつた場合には、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する(法80条6)。
条文上は調査が行われるように記載されていますが、必ずしも税務職員が会社へ訪問する形の実地による税務調査が行われるわけではありません。
ただし実地による税務調査が行われることも多く想定されるため、繰り戻し還付を行う場合は、税務調査のことも念頭においたほうがよいでしょう。
Ⅴ.「繰り戻し還付」と「繰越控除」
1.「繰り戻し還付」と「繰越控除」制度の違い
税務上において赤字(欠損金)が発生した場合、「繰り戻し還付」と「繰越控除」の二つの制度があり、青色申告法人はどちらかを選択することができます。制度の違いを簡単にまとめると次のようになります。
(1)「繰り戻し還付」
○ 前年に支払った法人税を還付請求します(住民税、事業税は還付できず、翌年以降7年間マイナス分を繰り越します)
○ 税務署において詳細にチェックがなされます(場合によっては税務調査があります)
(2)「繰越控除」
○ 還付を受けることはできません(法人税、住民税、事業税ともに翌年以降7年間マイナス分を繰り越します)
○ 7年経過後においてマイナスが解消されなければ、そのマイナスは切り捨てられることになります
2.「繰り戻し還付」と「繰越控除」選択のポイント
前期は黒字であり法人税を支払っていた中小企業者等が当期において赤字に転落した場合、これまではマイナス分を将来の所得と相殺するために「繰越控除」をするしか方法がありませんでしたが、今後は「繰越控除」をするか「繰り戻し還付」を受けるかの判断が必要になります。判断が必要な場合は、例えば次のような点を考慮して判断していただきたいと思います。
○中長期的に利益が出そうにない場合・・・
「繰り戻し還付」を受けたほうがよいでしょう。
特に長期(7年以上)において黒字化が見込めないようであれば、今後マイナス分を取り戻す機会がなくなるため、当期において「繰り戻し還付」を受けるべきでしょう。
○少しでも当面の資金繰りをよくしたい場合・・・
「繰り戻し還付」を受けたほうがよいでしょう。
還付を受けることができれば資金繰りが改善されるため、「繰り戻し還付」を受けるメリットは大きいと思われます。資金繰りが厳しい企業はまず手元資金及び当面の資金繰りを優先して考えるべきでしょう。
○上記以外・・・
還付金額を計算し、一方で税務調査の可能性のことも踏まえて、両方の制度を比較・検討して決めてください。
3.補足
前提条件が同じであれば、長い目で見ると「繰越控除」「繰り戻し還付」ともに大きな違いはない(今期還付を受けるか、将来の税金を減らすかの違い)ですが、早い段階で還付を受けることができるのは制度としては魅力がありますし、経営者としても早期に還付を受けたいと考えるのが普通だと思います。しかし税務調査の可能性が高くなることに過剰に反応してしまう「税務署嫌い」の経営者の方が多いのも事実です。
両制度のメリット・デメリットを理解して、どちらを選ぶか検討していただきたいと思います。
税務に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
又は
]]>世界的な経済の減速・景気の悪化に伴って多くの企業の業績は悪化し続けており、上場企業をはじめとして中小企業においても役員給与を減額する会社が続出しています。
役員給与は本来毎月定額で支給しなければならず、期の途中で金額を改定した場合には、改定前後における差額に相当する金額は法人税法上経費として認められない、というのが原則でした。
しかしその一方で業績が著しく悪化した場合など一定の要件・基準を満たしている場合においては、期の途中で金額改定を認めるという取り扱いになっています。ただしその要件・基準は明確でない部分も多く、また税務調査において役員給与は厳格にチェックされるケースも多かったことから、実務上において役員給与を期の途中で改定して問題がないかどうか判断に迷うケースが多々ありました。
そこで判断基準をより明確にするために、役員給与を改定できる場合の基準が国税庁から公表されましたので紹介します。
2.役員給与の規定
(原則)
役員給与はその事業年度を通して定期同額でなくてはならず、期の途中で役員給与の金額を改定すると、改定前後の差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められません。
ただし次の場合においては期の途中での役員給与の改定が認められています。
(期の途中での改定が認められる場合)
(1)通常改定事由
事業年度開始の日から3ヶ月以内の給与の改定
(2)臨時改定事由
役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更に基づく給与の改定
(3)業績悪化改定事由
経営状況が著しく悪化したことその他これに類するやむを得ない事情による給与の改定
3.今回公表された「業績悪化改定事由」の例示
「業績悪化改定事由」について、判断基準として次の具体例が示されました。
(1)株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
(2)取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
(3)業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
(4)上記以外の事例であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられる。ただしこの場合、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要がある。
上記の場合に該当すれば期の途中で役員給与を減額しても、減額前給与・減額後給与ともに法人税法上経費として認められます。
逆に上記の場合に該当しない改定については、役員給与の額のうち減額前後における差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められなくなり、課税所得が増えることになります。
4.実務上のポイント
実務上、最も重要なポイントは上記(4)であると考えます。
顧問税理士によって見解が変わってくるものと思われますが、私見では
○ 減額理由をきちんと説明できること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を説明しうる客観的な根拠資料が準備できれば、役員給与の減額は多くの場合において認められるものと考えます。
特に最近数ヶ月において業績悪化に伴い、期の途中で役員給与を下げたいという相談が多発していますが、私見では、再建計画を立てることができるのであれば積極的に期中減額を行って経営を立て直すべきであると考えます。
経営者の目線から最重要として考えることは「税法」のことではなく「経営」のことです。税理士の目線から「税法」を遵守することは当然のことなのですが、期中改定の判断が付きづらい場合においても、現在の景気情勢において会社を生き延びさせるためには経営上の判断を最優先し、会社も、税理士も、そしてもちろん税務行政も、柔軟に対応すべきであると考えます。
いずれにせよ国税庁が業績悪化事由について柔軟な姿勢を示していることは間違いありません。
最終的には顧問税理士と相談をして判断していただきたいと思いますが、役員給与を期の途中で減額する場合には、
○ 減額理由をきちんと説明すること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を客観的に説明できるように万全の準備をしてください。
役員給与の改定に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
1.創業費・開業費を正しく計上する
事業開始時に発生する費用は「創業費」と「開業費」に区分されます。
①創業費とは・・・
法人を設立するために通常必要となる費用で主に下記のものが該当します。
○発起人報酬
○設立登記にかかる登録免許税、司法書士手数料
○定款認証手数料
○株式払込取扱手数料
○創立総会に関する費用
○その他設立に必要な費用で会社が負担すべき費用
②開業費とは・・・
法人設立後、事業を開始するまでの間に特別に支出した費用で主に下記のものが該当します。
○広告宣伝費
○市場調査費
○接待交際費
○その他開業準備のために特別に支出する費用
上記の区分で考えれば、事業開始前に発生した費用であっても、事務所賃借料・水道光熱費・借入金利子・給与などの「経常的に生じる費用」は創業費・開業費に該当しません。
ではこれらの事業開始前に発生した「経常的に生じる費用」は損金に計上できないのでしょうか?
結論は設立第1期の損金に計上することが出来ます。
法人設立前に支出した「経常的に生じる費用」は、設立第1期の事業年度の申告に含めて計算することができるという取り扱いが出ています(基通2-6-2参照)。
(ただし設立期間が長期にわたる場合の設立期間中の費用や、個人から事業を引き継いだ法人成りの場合の設立期間中の費用は設立第1期の申告に含めることはできません。)
よって法人設立前に発生した「経常的に生じる費用」についても請求書・領収書等をきちんと保存し、その支出の内容がわかるようにしておきましょう。
2.創業費・開業費を損金化する
創業費・開業費は支出した事業年度で全額損金とすることもできますし、5年以内に(未償却残高を限度として)任意に償却することもできます。
設立当初は開業準備費用が嵩み、欠損(赤字)になる場合がよくあります。
このような場合は創業費・開業費は繰延資産として資産計上しておきましょう。
そして毎期の決算利益の状況を見ながら毎期の償却額を決めていきましょう。
3.まとめ
①開業費に該当し損金化できる費用なのか
②開業前費用として設立第1期の費用として損金化できる費用なのか
③開業前費用だが損金化できない費用なのか
は判断に迷うケースがあります。
開業前後は特に行うべきことが多すぎて事務作業がおろそかになりがちですが、出来る限り支出の内容を明確にし、損金化できるものは会社の損金に計上して正しく節税を心がけましょう。
(注)説明不足、誤解を招く表現が含まれている場合が起こり得ます。質問がございましたら相談フォームよりご連絡ください。
創業費・開業費に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
1.はじめに
前々回において輸入取引に関する消費税を取り上げましたが、今回は輸出取引に関する消費税法について取り上げます。
2.輸出免税の取り扱い
消費税は国内において事業者が行った資産の譲渡等に対し、課税が行われます。消費税法上は輸出取引も国内取引(国内において事業者が行った資産の譲渡等)の範囲に含まれますが、その商品・サービスが国外において消費されることから、一定の要件を満たした輸出取引に関しては消費税が免除されることとなっています(消費税法7条)。
3.輸出免税の対象となる取引に該当するかどうかの判定
下記の全てに該当した場合、その取引は輸出免税の対象となる取引に該当し、消費税は免除されたものとして取り扱われます。
(1)その取引が国内取引に該当するかどうか
(2)その取引が課税資産の譲渡等に該当するかどうか
(3)その取引が輸出取引等の範囲に該当するかどうか
(4)輸出取引等の証明があるかどうか
4.輸出免税の対象となる取引
輸出免税の対象となる取引の具体例としては次のものが挙げられます(消費税法基本通達7-2-1)。
(1)本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付
(2)外国貨物の譲渡又は貸付
(3)国際輸送、国際通信、国際郵便等
(4)外国貨物の荷役、運送、保管等の役務提供
(5)非居住者に対する無形固定資産等の譲渡又は貸付
(6)非居住者に対する役務の提供で次に掲げるもの以外のもの
○ 国内に所在する資産に係る運送又は保管
○ 国内における飲食又は宿泊
○ その他国内において直接便益を享受するもの
5.実務の現場から
例えば単に商品を海外へ輸出したような場合ですと輸出免税の判定は難しいものではありません。
しかし海外取引は単に商品を輸出する場合だけではなく、様々な形をとり取引が複雑になってきており、それに伴い消費税の判定も複雑なケースが増えています。
そこで実務において過去に直面した取引の中から海外関係の消費税判定ポイントをいくつか掲げます。
例1:インターネットを介した海外取引
(イ)国内において役務提供を行っていると判定されるケース
(ロ)国外において役務提供を行っていると判定されるケース
(ハ)国内外において役務提供を行っており、判定が難しいケース(どちらとも考えられるケース)
インターネット取引は国内にいながら同時に海外で事業を行うことができます。役務提供がどこで行われているかが判定ポイントとなりますが、ビジネスの形態によっては税法が追いついていない場合も想定されます。判断が難しい場合でも取引の事実関係を確認し、税務調査時に主張ができるようにしておくことが大切です。
例2:非居住者に対する役務提供
(イ)非居住者かどうかの判定
(ロ)役務提供地が国内か国外かの判定
非居住者に対する役務提供のうち国内において直接便益を享受しない場合は輸出免税に該当しますが、上記の判定に関し判断が難しいケースが想定されます。
例3:商社が介在している場合の輸出免税の判定
輸出免税を受けるのは誰か、取引書面で事実関係を確認する必要があります。
例4:輸出証明書並びに準ずる書類の判断
消費税法上輸出免税に該当する取引であっても、物品の輸出をしていないため輸出証明書がない場合も多くあります。この場合、相手方との契約書その他の書類で一定の事項を記載した書類の保存が義務付けられています。
6.輸出免税判定の重要性
「輸出免税取引」は、消費税が課税されない「非課税取引」・「不課税取引」とは課税の取り扱いが大きく異なります。よって輸出免税取引を「非課税取引」・「不課税取引」と混同した場合や、「輸出免税取引」を理解していなかった場合、次のようなミスが発生し、損失を被ってしまうことがありますので注意してください。
例1:
資本金が1千万円未満の事業者は、開業当初2年間は消費税が免除されるため、当初2年間は消費税の申告をしなかった。しかし輸出をメインとしている事業者は課税売上にかかる消費税よりも課税仕入にかかる消費税のほうが大きいケースも多く、「課税事業者」を選択する手続きをしていれば消費税の還付を受けることができたのに、手続きをしなかったため、消費税の還付を受けることができなかった。
例2:
「原則課税方式」を適用すれば消費税の還付を受けることができたのに、「簡易課税の届出書」を提出してしまい、消費税の還付を受けることができなかった。
7.さいごに
最近は個人・小規模事業者の輸出入取引が増えてきました。
海外取引の税務は税務調査でも特にチェックされやすいので、取引内容・事実関係の確認、証拠書類の保存には特に注意していただきたいと思います。
輸出入に関する税務・海外取引・国際税務に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
Ⅰ.はじめに
中小企業の海外進出・国際貿易取引が増えるにつれて、海外絡みの税務問題が増えつつあるように感じます。
一昔前ですと国際税務問題といえば一部の大企業のみに該当する問題であるかのような印象がありましたが、企業のボーダーレス化が進んだ昨今では海外取引を行っている中小企業は全くめずらしくありません。これらの企業は、特に海外取引について適正に処理を行っているか、税務リスクを検討しておかなければならないでしょう。
中でも消費税は非常に身近な問題であり、輸出入を行う事業者においては、輸出入に関する消費税をしっかりと理解しておく必要があります。
そこで本稿では消費税のうち、輸入取引に関する消費税について注意すべき点をまとめます。
Ⅱ.輸入申告の注意点
1.手続き
海外から輸入を行う場合、外国貨物を保税地域から引き取る者(輸入する者)は、原則として、品名・数量・金額・消費税等を記載した輸入申告書を税関長に提出し、その物品を引き取るときまでに輸入に関する消費税を納付しなければなりません(ただし担保を提供し、要件を満たせば最長3ヶ月間納期限の延長が可能です)。
2.課税標準・税率
(1) 課税標準
輸入消費税の課税の対象となる課税標準額は、
「関税課税価格(通常はCIF価格)+関税+消費税以外の諸税」
となります。
(2)税率
輸入消費税の税率は、国内取引と同様に5%(国税4%、地方税1%)となります。
(注)取引対価の額と消費税の課税標準額は異なりますので、通常の国内取引にかかる消費税とは異なり、必ずしも「取引対価の額×5%=消費税額」とはなりませんので、取引の都度、証憑類を確認し、消費税額を把握しなければなりません。
3.仕入税額控除
輸入取引について税関長に納付した消費税は、決算時に確定申告税額として納付すべき消費税から控除することができます(仕入税額控除)。
なお、仕入税額控除を受けるためには下記の事項を記載した書類を保存しなければなりません。
(1) 帳簿(引取り年月日、貨物の内容、課税標準・消費税額等を記載)
(2) 輸入許可書等(税関長、引取り年月日、貨物の内容、課税標準・消費税額、事業者の氏名等が記載されていることを確認)
Ⅲ.輸入消費税に関する否認事例
平成20年2月に東京地裁より、輸入消費税に関し仕入税額控除を認めないとする否認判決がありましたので紹介します(参考資料:週間税務通信NO.3008)。
1.事例
実質的な輸入者である企業(A社)が、輸入業務を他社(B社)へ委託。
B社は輸入業務を行い、B社の名前で輸入消費税を申告・納付。納付名義人はB社となっていたが、A社はB社へ消費税相当額を支払ったため、A社は自社の申告において仕入税額控除を行った。
2.判決結果
A社の仕入税額控除は認めない。
詳細な部分は省略させていただきますが、輸入許可書等の公法上の書面では、輸入業務を行ったB社が輸入並びに消費税を納税していることから、実質的な輸入者であるA社の仕入税額控除を認めないというのが趣旨である模様です。
3.注意点
仕入税額控除を受けることができるのは、輸入許可書上における輸入者です(実質的な輸入者と輸入申告者が異なる場合、通達により一部例外的な場合もあります)。
Ⅳ.さいごに
輸入を行う事業者に関しては、消費税の税務調査の際、輸入許可書及び帳簿に関して仕入税額控除の要件を満たしているかどうか、書類の保存状況を確認されることが多いです。
本稿では輸入に関する消費税を取り上げましたが、輸出免税取引に関しても留意しなければならない事項がたくさんあります。
貿易取引・国際取引はもはや売る・買うだけの取引ではなくなっており、税務判断が付き難い複雑な取引も多くなっています。
輸出入に携わる事業者の方々は、法務リスクだけではなく消費税をはじめとした税務リスクに関しても充分注意を払っていただきたいと思います。
輸出入に関する税務・海外取引・国際税務に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>Ⅲ.実務上の取り扱い例 ― ある大企業の借上げ社宅制度
実務上借上げ社宅の「固定資産税の課税標準額」を調べることは面倒であり、また実際に計算すると非常に安い金額になる場合が多いです。
そのため一部大企業の借上げ社宅制度では、賃貸料相当額=実際支払家賃の10%、20%等(つまり使用人の場合、本人負担5%、10%等)と固定しているところもあるようです。
会社負担が高ければ高いほど享受する税務メリットが大きくなる一方、税務リスクも高くなります。税務リスクがないわけではないのでご理解のうえ、最終的には顧問税理士の意見を仰いでください。
Ⅳ.補足
住宅貸与制度を導入する場合はそのメリットを従業員へ充分に説明すべきでしょう。従業員がそのメリットを理解しなければ、自分で家賃を払っている場合よりメリットがあるにもかかわらず、会社としては福利厚生を提供している意味合いがありません。
Ⅴ.さいごに
一般的に中小企業は大企業に比べ福利厚生面において恵まれていない場合が多いです。
従業員の福利厚生に寄与し、なおかつ会社側にとっても税務メリットを享受できる福利厚生プランであれば、検討に値するのではないでしょうか。住宅貸与制度についても会社・従業員(役員)双方にメリットがある内容なので知っておいて損はないと思います。
福利厚生制度を再検討したいと考えている企業は、非課税メリットを享受できる導入可能なプランがないかどうか、一度顧問税理士と相談してみてはいかがでしょうか。
税務メリットのある借上げ社宅 に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>Ⅰ.はじめに
先日知り合いの社長さんから次のような話を聞きました。
「うちの会社は給与の水準は高くないけれど、給与以外の福利厚生は充実しているんだよね。お昼の弁当代は全て会社が払っているし、社員が使える経費もけっこう寛容に認めているし、その他にも直接お金ではないけれど、色々社員へ還元しているんだよ。」
それ以上詳しい内容は聞きませんでしたが内容によっては税務上問題になる可能性があります。
今回は金銭以外で提供される「現物給与」について取り上げたいと思います。
Ⅱ.現物給与とは
1.現物給与に対する課税の原則
「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする」(所得税法36条)
つまり給与として課税されるものは金銭だけに限りません。金銭以外の形で何らかの経済的な利益を受けた場合、その経済的利益(現物給与)については原則として給与として課税されることになります。
納税者サイドからすると一見非常に厳しい規定のように感じられますが、無条件で現物給与を認めると課税上の弊害が発生することは明らかですので、課税サイドからすると当然の規定であるといえるでしょう。
2.現物給与の範囲
下記に該当する利益を提供した場合、その利益を受けた者は原則として「現物給与」として課税されることになります。
一口に現物給与といっても想定される支給形態は様々ですので、何らかの経済的利益を受けている場合は「現物給与」とみなされる可能性があると考え、税務リスクがないかどうか一度は検討したほうがよいでしょう。
○ 物品等を無償又は低価で供与した場合の供与利益
○ 土地・家屋・その他の資産を無償又は定価で貸与した場合の貸与利益
○ 金銭の無利息又は低利貸し付けをした場合の供与利益
○ その他用役を無償又は低価で供与した場合の供与利益
○ 債務免除を行った場合の債務免除益
3.課税されない例示
ただし所得税法基本通達には、上記2に該当する現物給与であっても課税されない場合について例示されています。下記に掲げるもののうち一定の要件に該当した場合は、現物給与ではありますが課税されません(所基通36-21~36-35の2)。
○ 永年勤続者の記念品
○ 創業記念品
○ 商品、製品等の値引販売
○ 残業又は宿日直をした者に支給する食事
○ 金銭の無利息貸付のうち、特殊理由もしくは少額なもの
○ 使用者(以下会社と表現する)が負担するレクリエーション費用
○ 会社契約の保険料(のうち一定の要件に該当するもの)
○ 会社が負担する役員又は使用人の行為に基因する損害賠償金等(のうち一定の要件に該当するもの)
○ 会社が負担するゴルフクラブ、社交団体等の入会金等(のうち一定の要件に該当するもの)
4.一部課税されない例示
一部給与として課税すれば、一部は給与として課税されない例として次のものがあります。
○ 食事代の支給
会社が使用人(または役員)に対し支給した食事代のうち、使用人負担割合が50%以上で、さらに会社負担額が月額3,500円以下の場合のその会社負担額は課税されません。
(会社負担額が50%を超える場合、または月額3,500円を超える場合はその全額を給与とします)。
○ 住宅の貸与
住宅の貸与については役員・使用人でその取り扱いが異なります。
家賃のうち一定の算式に基づいて計算した金額をその役員・使用人から徴収すれば、残りの会社負担分は給与として課税されません。会社として導入可能であれば非常にメリットがある福利厚生プランとなります。詳細は事例を示しながら次回において説明したいと思います。
5.現物給与のメリット
現物給与を活用した福利厚生プランを導入した場合、次のようなメリットが期待できます。
○ 会社としては少ない費用負担で福利厚生プランを提供することができ、従業員としては税務メリットを享受しながら福利厚生の恩恵を受けることができる
○ 福利厚生を選択できるカフェテリア方式を採用すれば、従業員の士気があがりやすい
(補足)社会保険について
社会保険に関しても法律上は現物給与を加味して社会保険料を算定しなければなりません。会社が現物給与を含めずに社会保険料を算定していれば、それだけ会社(及び従業員)が負担する社会保険料は安くなっています。私見ではありますが、特に中小企業の場合、会社側が現物給与を含めて社会保険料を算定しているか、社会保険事務所側もどこまで厳しくチェックしているか疑問に感じます。
Ⅲ.さいごに
次回は現物給与の中でも福利厚生制度として取り入れれば税務メリット・福利厚生メリットを大きく享受できると思われる住宅貸与制度を取り上げたいと思います。
現物給与、税務メリットのある福利厚生プランに関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
Ⅰ.少人数私募債とは
少人数私募債は社債の一種ですが、発行手続きが簡便であるため、中小・ベンチャー企業の資金調達の一方法として注目を集めています。
そこで本稿では少人数私募債の活用と、失念しがちな発行後の税務手続きについて説明します。
Ⅱ.少人数私募債の発行条件
主な発行条件は次のとおりです。
1.発行体: 株式会社、合同会社、合名会社、合資会社等であること
2.募集対象者: 募集対象者が49名以下であり、取引先・縁故者等を中心とした直接募集であること
3.社債発行単位: 社債発行総額を社債の最低額面金額で割った数が49以下であること。
4.告知義務: 社債発行が1億円未満の場合、届出・告知義務なし
5.担保・保証人: 不要
Ⅲ.発行のメリット
当然資金調達が目的ですが、次のような2次的メリットも考えられます。
1.発行内容によっては手続きが簡便かつ迅速であるので、状況次第では金融機関に依頼するより早期に資金調達が可能である
2.社債を発行することにより、金融機関からの格付け・評価・信用力が高まることも期待できる
3.社債という形で資金援助を受けることで、支援者との関係が強化される
Ⅳ.発行手続き
少人数私募債発行までの一般的な手続きの流れを示すと下記のようになります。初めて社債を発行する会社は、書類の作成準備、手順について最初は複雑に感じるようですが、手順どおりに進めていけば手続き自体はスムーズに進んでいきます。
1.事業計画書の作成
2.社債募集に関する取締役会の決議
3.社債発行趣意書・募集要項の作成
4.社債申込証の作成
5.社債引受人の審査
6.社債発行金額の決定
7.社債募集決定通知書の作成・送付
8.社債申込証拠金の受取
9.社債申込証拠金預り証の発行
10.社債券の印刷・発行
11.社債原簿の作成
Ⅴ.税務手続き
1.利息に対する源泉徴収
少人数私募債に限らず社債を発行する場合には、社債発行者は社債権者に対し、毎利払い期において社債利息を支払うことになりますが、その利息からは20%(国税15%、地方税5%)の源泉所得税を差し引かなければなりません。
2.社債発行者側の取り扱い
社債発行者は社債権者に対し毎利払い期において社債利息を支払うことになりますが、源泉所得税に関する次の諸手続きが必要になります。
(1)源泉所得税の納付
社債発行者は、利払い日の属する月の翌月10日までに、源泉徴収した所得税(15%)を税務署へ納付しなければなりません。
なお社債利息にかかる源泉所得税については、「源泉所得税の納期特例制度(源泉所得税を半年分まとめて収める制度)」はありませんので注意してください。
(2)地方税(利子割り)の納付
社債発行者は、同様に利払い日の属する月の翌月10日までに、源泉徴収した地方税利子割り(5%)を県税事務所へ納付しなければなりません。
(3) 県税事務所への届出
社債発行者は、社債発行・利払いの内容に関し、県税事務所へ「営業所等設置届出書」を提出しなければなりません。
3.社債権者側の取り扱い
社債権者が受け取る利息は20%が源泉徴収されており、社債権者が個人の場合は源泉徴収で終了し、確定申告は不要です。社債権者が法人の場合は利息を含めて決算申告することになります。
Ⅵ.さいごに
少人数私募債は、金融機関から資金調達ができなかった場合に考える最後の手段というイメージもないことはないのですが、取引先・従業員・親族等からの支援が得られそうな状況である場合、検討する余地は充分あると思います。
少人数私募債による資金調達の可能性については、
1.いかに魅力的な事業であるか(魅力的な事業計画を示すことができるか)
2.どれだけの支援者がいるか
に尽きるのではないでしょうか。
資金調達・少人数私募債に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>税務申告をしたことがある納税者にとって「税務調査」はできれば経験したくない、避けたいと思う「事件」ではないでしょうか。
国税庁は毎年税務調査に関する統計を公表しており、昨年末に平成18年の相続税に関する税務調査の統計が公表されました。統計内容は例年と比較して著しい変化はなかったのですが、相続税調査に関する統計は一般的にあまり知られていないため、本稿ではその調査結果を紹介するとともに、その調査結果から読み取れる相続税調査のポイントを考察します。
2.調査データ
(1)相続税申告事績と考察
①死亡者数 約108万人
②相続税の対象者数 約4万5千人
平成18年中に亡くなった方のうち相続税の納税義務があった方はわずか4.2%でした。この割合は年々減り続けており、相続税はごく一部の富裕層にしかかからない税金となっています。
一方最近では基礎控除の縮小・相続税の課税方法の変更の議論の声も上がっており、今後の税制改正の動向が注目されます。
(2)税務調査事績と考察
①税務調査件数 14,061件
②申告漏れ指摘件数 12,061件
全体に占める申告漏れ割合は85.8%、つまり税務調査が行われた結果85.8%の割合で財産の申告漏れが指摘されています。
③重加算税対象件数(悪質とみなされたもの) 1,820件
全体に占める重加算税対象割合は15.1%、つまり税務調査が行われた結果15.1%の割合で悪質な所得隠しが指摘され、重加算税という重いペナルティが課せられています。
④申告漏れ課税価格 4,076億円
申告漏れ1件あたりの課税価格は3,380万円となっています。
⑤追徴税額 939億円
申告漏れ1件あたりの追徴税額は779万円となっています。
⑥海外資産について
海外資産に関する調査は年々厳しくなっています。平成18年度は364件の調査が行われ、292件の申告漏れ(申告漏れ割合は80.2%)が指摘されました。なお1件あたりの申告漏れ課税価格は約5,075万円と非常に高額になっています。
⑦申告漏れ財産について
税務調査に基づく申告漏れ財産の金額と全体に占める割合は次のとおりでした。
○ 土地674億円(16.7%)
○ 家屋73億円(1.8%)
○ 有価証券848億円(21.0%)
○ 現金・預貯金等1,440億円(35.6%)
○ その他1,009億円(24.9%)
(申告漏れ財産合計4,044億円)
申告漏れ財産のうち金融資産(現預金・有価証券等)が半分以上を占めています。
3.申告漏れ財産から見る注意点
(1)金融資産
家族名義に変えてしまった預金を一般的に「名義預金」と呼びますが、「名義預金」の計上漏れが非常に多くなっています。
実際に税務調査の場では預金通帳のチェックが行われることが多くあり、預金の流れを調べていけば不自然な預金の引き出しはすぐにチェックされてしまいます。計上漏れと判定された預貯金はそのまま全額が相続税の課税対象になりますので追徴税額も高額になってしまいます。くれぐれも「名義預金」には注意してください。
(2)土地
税務調査による否認額は預貯金に比べれば大きくはありませんが、土地は財産評価額が非常に大きいため評価方法等を少し誤っただけで税額が大きく異なってしまうことも起こりえますので、下記の点をはじめ充分な注意が必要です。
①評価ミス
財産の評価額が大きければ、数パーセントの評価ミスで大きな税額の差となります。
土地については一般的に「相続税法財産評価基本通達」をベースに評価することになりますが、評価方法は非常に細かく定められており、かつ特殊評価方法も多くあります。
近年は「広大地」評価に関するミスが目立ち、我々専門家も充分な注意を払って対処しています。
②小規模宅地選択ミス
小規模宅地評価減規程を利用すれば一定の面積について土地評価の50%~80%相当の評価減を期待することができますが、適用を誤ると相当な金額のミスとなってしまいます。
相続案件を専門に扱っている税理士の立場からすると当然のことなのですが、税理士に依頼せずに納税者自らが申告を行っている場合、もしくは相続に不慣れな税理士が申告を行っている場合等、実際に小規模宅地に関する適用ミスも数多く発生しています。
4.さいごに
相続税の税務調査官は日々税務調査を行っています。一般納税者の方が一生に一度もしくは二度あるかないかの相続税申告において財産を隠そうと思っても、税務当局がその気になり税務調査を行えば、簡単に財産計上漏れを発見してしまうでしょう。
当事務書にもたくさんの方が相続の相談にいらっしゃいますが、名義預金等の形で既に財産を他の親族の方へ移してしまっているケースも中にはあります。
(税金を少しでも少なく・・・)
という気持ちはわかりますが、
(いつか税務署が調べに来るのではないか・・・)
とビクビクしながら日々を過ごすよりも、信頼のできる専門家に相談し、合法的な節税を行いながら適正に申告をしたほうが、健全で毎日を安心して過ごすことができると思いませんか?
相続・税務調査に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
Ⅰ.はじめに
前回までで事業承継対策の法務的・税務的な論点を見てきました。
本稿では実際に事業承継対策を行う場合のプロセスを紹介します。
なお事業承継は主に下記の2点から考えていかなければなりません。
○ 人的な承継対策(後継者をどのように選定し、育てていくか)
○ 物的な承継対策(後継者へ株式・経営権をどのようにしてスムーズに引き継ぐか)
本稿では上記のうち、物的な承継対策を進めていく部分に焦点を絞って説明していきます。
Ⅱ.ケース別承継方法
事業承継対策において概ね方向性が定まってきますと、どのようにして実際に事業を承継していくか、承継方法の検討に入ります。
承継方法は下記のケースごとで大きく異なります。
○ 後継者が親族の者であるのか
○ 後継者が親族以外の者であるのか
○ 社内に適正な後継者がおらず、会社を売却することを選択するのか
○ 承継者がおらず、廃業を選択するのか
1.親族内での承継
後継者が親族の者である場合、承継方法(株式の移転方法)としては第一に贈与を考えます。ただし多額の贈与を行いますと贈与税の負担が相当重くなってしまいますので、贈与とともに譲渡を組み合わせて行う場合も数多くあります。
事業承継対策にあたって税務に重点を置くのであれば、事前に株価引き下げを検討し、トータルで納税額が最も少なくなると思われる方法で移転計画を立てます。
2.親族外への承継
後継者が従業員等の親族外後継者である場合、承継方法としては第一に株式を譲渡することを考えます。
ただしこの場合後継者が株式買取り資金を準備しなければなりませんので、どのようにして後継者が資金を準備するかが大きな問題点となります。
これについては一般的には報酬を(合理的な理由が説明できる範囲内で)増額し、数年かけて買取りをすすめていくことが多いようです。
また他の方法としては、支援を受けることが可能であればMBO(マネージメントバイアウト)という手法も有効です。
MBOは、後継者(会社)が金融機関等から融資支援を受け、その資金を基にして現経営者から株式を買い取る手法です。これにより後継者が株式(経営権)を確保することができ、後継者を中心とした新体制を確立することができます。
3.会社売却(M&A)
会社内に適正な後継者がいない場合、事業を存続させていくためには会社売却(M&A)が最適な場合もあります。
M&Aが成立するかどうかはその事業の売り手と買い手の交渉で決まりますから、前回までで説明した自社株の算定方法とは異なったプロセスにより企業価値(株価)を算定します。
企業価値の算定方法は、将来生み出すと予想されるキャッシュを基に算定するDCF法、将来予想される利益と資本を基に算定する収益還元法、企業の財産価値を基に算定する時価純資産法等、複数の方法があり、様々な角度から企業価値を算定します。
M&Aが成立すれば、現経営者は多額のキャッシュを手にする一方で、事業からは完全に離れることになります。
4.廃業
社内に適正な後継者がおらず他の方法を検討した結果、事業を辞めることが最善であるという結論に至る場合もあります。
廃業を選択することになった場合、いかに問題なく廃業するかを検討していきます。
例えば下記の事項を検討します。
○ 借り入れを返済し、担保・保証を整理する
○ 従業員の再雇用先を確保する
○ 事業のうち存続できる部分・売却できる部分はないかを検討する
廃業手続き自体はそれほど難しいものではありませんが、問題なく廃業するための準備は簡単でない場合が多くありますので、早くから会社の方向性を定めることも重要なことだと思います。
Ⅲ.事業承継の進め方
物的承継に関する事業承継の進め方の一例を紹介します。
1.現状把握
下記のポイントを中心にして企業の置かれている状況を整理し、現状を把握するとともに問題点を検討します。
○ 会社の財務状況・株価はいくらか
○ 現時点で資本政策上、問題点・リスクはないか
○ 現時点での経営上の問題点は何か(事業承継を行うことによってどのような変化・影響があると予測 されるか)
○ 現経営者の財産状況・親族関係はどうなっているか
○ 後継者の財産状況(株式の引継ぎは可能か)
2.承継計画の立案
現状把握を基にして「承継」という目標に向かって具体的な計画を立てていきます。漠然とした計画ではなく、時間軸を基に具体的な数値を定めて計画を立てるべきです(事業承継対策は長期間に及びますので、途中で計画が変更されることもよくあります)。
3.実行
承継計画に基づいて手を付けることができる部分から実行していきます。
4.検証・修正
事業承継対策は一般的に長期間に及びますので方向性が変わることもあります。修正すべき事項が発生した場合は計画を見直し、「承継」という目標に向かって軌道修正します。
Ⅳ.さいごに
5回に分けて事業承継対策を考えてきましたが、承継対策は長期に及びますし、想定される問題点は多岐に渡ります。
(当社は後継者が決まっていないから・・・)
と事業承継の問題点を先延ばしにせず、検討できる部分からでよいので早い段階から専門家に相談し、事業承継の問題を考えていただきたいと思います。
事業承継に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>そこで本稿では自社株の評価額を引き下げる方法を紹介します。
なお自社株の評価方法は前回のコラムを参考にしてください。
2.自社株評価減額対策
(1)基本的な考え方
自社株は相続税財産評価基本通達に基づいて評価されますが、評価の基礎となる算定要素は細かく定められています。
自社株評価の引き下げを検討する場合、一般的な対策としてはこれらの算定要素の数値を引き下げることができないかをまず検討します。
(2)算定要素の引き下げ
○ 類似業種比準価額方式
類似業種比準価額方式は、「配当」「利益」「純資産」の3要素を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)配当を引き下げる
(イ)利益を引き下げる
(ウ)純資産を引き下げる
ことを検討します。
○ 純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の時価純資産を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)時価純資産を引き下げる
ことを検討します。
(3)評価引き下げ対策-具体例
(2)の考え方を基にして株価評価を引き下げる可能性がある対策を紹介します。
○配当をやめる(もしくは配当率を下げる)
配当を引き下げれば配当要素は引き下がります。しかし一方で会社の内部留保は高まるため純資産価値が高くなります。そこで株主=役員の会社においては、配当は出さずにできる限り役員報酬として支給する(内部留保を下げる)ように考えます。
○役員報酬を増額する
合理的な基準により役員報酬を引き上げれば会社の利益は下がり、株価評価が下がることが想定されます。
○役員退職金を支給・準備する
役員退職金の財源を準備しておき、役員退任時に役員退職金を支給します。すると役員退職金という大きな損金が計上されますので、役員退職金の支給により株価評価が下がることが想定されます。
役員退職金は税効果・株価対策という点だけでなく、役員(遺族)の生活資金・納税資金としても必要ですので、非常に有効かつ重要な対策だと考えます。
○高収益部門を切り離すなどの組織再編を行う
会社分割・営業譲渡・株式交換等の組織再編を行うことにより株価評価が下がる場合があります。特に高収益部門を切り離せば株価評価が下がることが期待できます。
しかし他の対策にも共通して言えることですが、組織再編の場合は特に対策を見誤ると、逆に株価が上昇してしまったり、行った対策が経営上マイナスに働いてしまうこともありえますので、事前に綿密な検討・準備・シミュレーションが必要です。
○含み損のある資産を売却・処分する
含み損のある資産を売却すれば損失が実現しますので、株価評価が下がることが想定されます。
○不良債権・不良在庫の処分
上記と同様に不良債権・不良在庫を処分すれば損失が実現しますので、金額によっては株価評価が下がることが想定されます。
○損金性の高い保険の活用
損金性の高い保険を活用すれば株価対策として有効です。しかし損金性が高くかつ貯蓄性も高い保険については、最近特に税務リスクが高まっていますので充分注意すべきです。
○借入金による賃貸不動産の取得
借入金で賃貸不動産を取得すれば、借入金は額面評価、取得不動産は路線価・固定資産税評価額等で評価(ただし取得後3年間は時価で評価)されることになり、取得前よりも全体の時価純資産額が下がり、株価評価が下がることが想定されます。
(4)移転方法
相続対策・事業承継対策としては、自社株評価を引き下げた後、贈与・譲渡等の方法で株式を後継者・役員・持ち株会等へ移転します。
なお対策は株価評価の引き下げだけでなく、スムーズな相続対策・事業承継対策を進めるために、移転スケジュールまで並行して検討すべきです。
3.さいごに
以上株価評価を引き下げる可能性のある対策を検討しましたが、対策は「株価対策」という一方向のみで考えるのではなく、多方面からよりよい方法を考えるべきです。
合理的な理由が伴っていない対策は税務上否認されるリスクを伴いますし、相続対策としては有効であっても相続対策効果以上に他の税金が上昇したり、行った対策が事業戦略上マイナスに働いては対策を行う意味がないと思います。
まずは綿密な検討を行い、経営上プラスに働くような対策であれば積極的に実行していただきたいと思います。
事業承継・自社株評価に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>
1.はじめに
オーナー社長の相続税対策を考える場合において、自社株の評価は非常に重要な意味合いを占めます。そこで本稿では相続・贈与において自社株がどのように計算されるのかを説明します。まずは評価の概略として
「どのような基準で株価が計算されるのか」
を理解していただきたいと思います。
2.自社株評価算定手順
○ステップ1:株主の判定
最初に株主の判定をします。ただし下記に示す判定には例外もありますので、株主構成によっては株主の判定結果が変わります。ご注意ください。
①第一段階:
その会社の中に、
「同族株主に該当する者がいるか」または「同族株主に該当する者がいないか」
を判定します。
②第二段階:
財産を取得する者が、
「同族株主に該当するか」または「同族株主に該当しないか」
を判定します。
③第三段階:
同族株主に該当する場合、その者が
「中心的な同族株主に該当するか」
または
「少数株主に該当するか(中心的な同族株主に該当しないか)」
を判定します。
「中心的な同族株主に該当するか」
「少数株主に該当するか(中心的な同族株主に該当しないか)」
で株価の評価方法は全く異なりますので厳密な判定が必要です。
(注1)「同族株主」とは、持ち株割合が30%以上(一定の要件に該当する場合には50%以上)のグループに属する株主のことです。
(注2)「中心的な同族株主」とは、同族株主の一人の株主(一定の親族を含む)の持ち株割合が25%以上である場合のその株主のことです。
○ステップ2:会社の規模を判定します
会社の取引金額・純資産価額等を基にして株式評価上の会社の規模を判定します。判定により、会社は次の区分に分けられます。
・大会社
・中会社(さらに大・中・小の3区分に分かれる)
・小会社
○ステップ3:特別な会社に該当しないか、財務内容等を判定します
特別な会社の例:
・土地の保有割合が大きい会社(土地保有特定会社)
・株式の保有割合が大きい会社(株式保有特定会社)
・配当・利益・純資産のうち、2つ以上がマイナスの会社など
○ステップ4:その会社の判定基準に合った評価方法で株式を評価します
☆評価方法
株式の評価方法には次の3種類があります。
①類似業種比準価額方式
類似業種比準価額方式とは、
「自社の事業内容と類似する業種の上場会社の株価と、自社の財務内容を比較して株価を比較計算する方式」
と理解してください。
②純資産価額方式
純資産価額方式とは、
「自社の現在の時価純資産を基に株価を計算する方式」
と理解してください。
「純資産価額方式」では、自社が所有するすべての財産・負債の時価を算定して計算します。特に不動産や株式は時価と帳簿価額とが大きく乖離する場合もありますので、厳密に評価することが求められます。
③配当還元価額方式
配当還元価額方式とは、
「自社の過去の配当金額を基に株価を計算する方式」
と理解してください。
☆会社に応じた評価方法
上記で判定した「株主区分」「会社区分」等により株式の評価方法が決定します。
① 通常の会社の場合{ステップ3(特別な会社)に該当しない場合}
(イ)中心的な同族株主の場合(ステップ1参照)
⇒ 会社の規模(ステップ2参照)に応じて次のいずれかの方法で計算します。
○ 「類似業種比準価額方式」
○ 「純資産価額方式」
○ または「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」をミックスする方式
(ロ)少数株主に該当する場合(中心的な同族株主に該当しない場合)(ステップ1参照)
⇒ 配当還元価額方式で計算します。
通常、類似業種比準価額・純資産価額に比べ、配当還元価額は非常に低くなります。
つまり、
支配力がある株主については原則的な高い評価方式で、支配力がない少数株主については特例的に低い評価方式で評価することになります。
②特別な会社の場合{ステップ3(特別な会社)に該当する場合}
通常の会社の場合の方法をとらず、特別な会社において定められている評価方法をとります。多くの場合、時価純資産を基に諸調整を加えて評価されることになります。
3.さいごに
次回は自社株評価を減額する対策について検討します。なお本稿で記載した評価方法は、原則的な部分しか記載しておりません。自社株評価方法は原則があり、特例があり、そのまた特例があり、非常に複雑になっており一つの判定を誤ると評価方法・評価額が全く変わってしまうこともありえます。自社株がどのようにして算定されるのかその仕組みを理解していただくことは非常に有意義なことですが、実際の事業承継スキームを税務面から検討する際は、やはりここは税理士に相談していただきたいと思います。なお事業承継に関する税制は現在様々な面から議論されており、近々大きな改正が行われるものと推測されますので税制改正の動向にも目を向けていただきたいと思います。
事業承継・自社株評価に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>1.はじめに
前回に引き続き、種類株式を使った事業承継対策を検討します。
実際に種類株式を発行し活用できるかどうかは諸条件によって変わってきますので、会社の状況に当てはめ、本稿では記載しきれていない諸条件まで確認してご判断ください。
2.ケース別種類株式活用法
(1)少数株主を整理したいケース
○ 全部取得条項付株式を活用
既に相続等で分散されてしまった株主を整理したいケースです。全部取得条項付種類株式という種類株式を発行することができれば、少数株主から強制的に株式を買い取ることが可能です。
なお買い取りにあたっては買い取り金額の交渉は必至ですが、会社法に即して株式を強制的に買い取るという行為が可能になります。
(2)好ましくない株主を排除したいケース
○ 全部取得条項付株式を活用
例:過半数は社長一族が保有しているが、先代からの番頭さんである従業員株主が株式を10%程度所有しているケース。
「少数株主を整理したいケース」の応用です。全部取得条項付種類株式を活用できれば、好ましくない株主を排除し、経営上の支配力をより強固にすることができます。
(3)将来株式が分散されるのを防ぎたいケース
○譲渡制限株式を活用
定款に株式の譲渡制限を定めておけば、株式を譲渡する場合に会社の承認が必要となりますので、会社に関係のない第三者に株式が渡ってしまう危険性を減らすことができます。ただし相続については譲渡制限の規制はかかりませんので、相続による株式の分散を防ぐためには、下記の売り渡し請求を同時に定めておかなければなりません。
○金庫株(自己株式)を活用
種類株式ではありませんが、自己株式を使って将来株式が分散されることを防ぐことができます。
具体的には、会社が相続発生時に相続人から強制的に株式を買い取ることができるという、売り渡し請求権を定款で定めることにより、会社にとって関係のない(経営上ふさわしくない)者へ株式が相続されてしまうのを防ぐことができます(当然ながら買い取り金額をいくらにするかという問題は残りますので、資金面についても事前に準備しておく必要があります)。
(4)事業を承継する息子へ経営権をスムーズに渡したいケース
○議決権制限株式(無議決権株式)を活用
○剰余金配当優先株式を活用
○遺言を活用
議決権のある株式を後継者へ、議決権のない株式を非後継者へ渡せば、議決権並びに経営権を後継者へスムーズに渡すことができ、一方で財産権については平等に近づけて分割を行うことが可能になります。
とはいえ財産の分割についての問題は非常に発生しやすいので、非後継者へ渡す株式については、議決権がない代わりに配当を優先して受けることができる「剰余金配当優先株式」にしておくことや、遺留分対策として遺言を行っておくなど、将来の相続発生時に少しでも財産分割について問題が起こらないように事前対策を行っていくことが重要だと考えます。
(5)後継者が成長するまで経営を監視したいケース
○拒否権付き株式を活用
例:息子である後継者へ経営権を早く引き継ぎたいが、経営面で一抹の不安があり、一部の最終的な意思決定権はまだ自分が持っておきたい場合。
例:血のつながっていないNO2の人間に経営権を引き継ぐ予定であるが、社長就任後の手腕に一抹の不安がある。しばらくの間は経営を監視する意味で一部の意思決定権はまだ自分が持っておきたい場合
現在の経営者が拒否権付株式を一部保有し続けることで、後継者の経営状況を監視することができます。ただしいつまでも経営に口を出し続け、後継者以下新経営陣の経営を阻害することのないようにしなければなりません。
3.資金の問題
上記のスキームを使うことができれば、株主から株式を強制的に取得することが可能になりますが、当然買い取り資金が必要になります。
買い取り金額は「時価」が原則となりますが、「時価」をいくらとみるかで協議が必要なケースも想定されます。
①「いくらで買い取るか」という問題
②「買い取り資金をどのように調達するか」という問題
も同時に検討すべきです。
4.さいごに
次回は自社株の評価方法について説明します。
事業承継・相続対策に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
この場合、社債類似株式は社債に準じて発行価額で評価されることになります。
「普通株式」を取得した相続人は(一般的に高額となる)株式評価、「社債類似株式」を取得した相続人は(一般的に低額となる)社債評価となり、相続人間における遺産分割の評価上の公平感、及び遺留分の問題等が解決されないことから、事業承継という観点において社債類似株式がどこまで有効に使えるのかは、筆者の意見としては疑問を感じます。
(3)拒否権付き株式
① 株式の特徴
一定の決議事項について拒否権を有する
② 株式の評価方法
普通株式と同じ評価
4.考察
今回明らかになった「種類株式」の評価方法は、次のスタンスをとっています。
○ 原則として「種類株式」も「普通株式」と同じ評価をするが、「種類株式」の特殊性から一定の要件を満たす場合には株式間の評価の調整(加減算)を認める
○ 「種類株式」を用いて株式全体の評価が下がることは意図されていない(税務上のメリットはあまり期待できない)
「種類株式」を使った事業承継対策は、スムーズな経営権の移転を行うという点においては有効ですが、改正の趣旨からすると相続財産の評価を減額する税効果については過度に期待しないほうがよいようです。
5.さいごに
次回は「種類株式」を使った具体的な事業承継対策を検討します。
今回中小企業の事業承継において特に活用が期待される「種類株式」の3形態に関して評価が明らかとなり、今後実際に「種類株式」の活用が進んでいくものと思われます。
しかし会社法では少なくとも9形態の「種類株式」が定められていますので、税務においても形態別の種類株式の評価方法は早急に明記されるべきであると思います。
税務の取扱が不明確だからなかなか種類株式が使えない、ということはあってはならないことだと思いますが、いかがでしょうか。
事業承継・相続に関する相談は
名古屋市中区の橋本税理士事務所へ

又は
]]>