税務申告をしたことがある納税者にとって「税務調査」はできれば経験したくない、避けたいと思う「事件」ではないでしょうか。
国税庁は毎年税務調査に関する統計を公表しており、昨年末に平成18年の相続税に関する税務調査の統計が公表されました。統計内容は例年と比較して著しい変化はなかったのですが、相続税調査に関する統計は一般的にあまり知られていないため、本稿ではその調査結果を紹介するとともに、その調査結果から読み取れる相続税調査のポイントを考察します。
2.調査データ
(1)相続税申告事績と考察
①死亡者数 約108万人
②相続税の対象者数 約4万5千人
平成18年中に亡くなった方のうち相続税の納税義務があった方はわずか4.2%でした。この割合は年々減り続けており、相続税はごく一部の富裕層にしかかからない税金となっています。
一方最近では基礎控除の縮小・相続税の課税方法の変更の議論の声も上がっており、今後の税制改正の動向が注目されます。
(2)税務調査事績と考察
①税務調査件数 14,061件
②申告漏れ指摘件数 12,061件
全体に占める申告漏れ割合は85.8%、つまり税務調査が行われた結果85.8%の割合で財産の申告漏れが指摘されています。
③重加算税対象件数(悪質とみなされたもの) 1,820件
全体に占める重加算税対象割合は15.1%、つまり税務調査が行われた結果15.1%の割合で悪質な所得隠しが指摘され、重加算税という重いペナルティが課せられています。
④申告漏れ課税価格 4,076億円
申告漏れ1件あたりの課税価格は3,380万円となっています。
⑤追徴税額 939億円
申告漏れ1件あたりの追徴税額は779万円となっています。
⑥海外資産について
海外資産に関する調査は年々厳しくなっています。平成18年度は364件の調査が行われ、292件の申告漏れ(申告漏れ割合は80.2%)が指摘されました。なお1件あたりの申告漏れ課税価格は約5,075万円と非常に高額になっています。
⑦申告漏れ財産について
税務調査に基づく申告漏れ財産の金額と全体に占める割合は次のとおりでした。
○ 土地674億円(16.7%)
○ 家屋73億円(1.8%)
○ 有価証券848億円(21.0%)
○ 現金・預貯金等1,440億円(35.6%)
○ その他1,009億円(24.9%)
(申告漏れ財産合計4,044億円)
申告漏れ財産のうち金融資産(現預金・有価証券等)が半分以上を占めています。
3.申告漏れ財産から見る注意点
(1)金融資産
家族名義に変えてしまった預金を一般的に「名義預金」と呼びますが、「名義預金」の計上漏れが非常に多くなっています。
実際に税務調査の場では預金通帳のチェックが行われることが多くあり、預金の流れを調べていけば不自然な預金の引き出しはすぐにチェックされてしまいます。計上漏れと判定された預貯金はそのまま全額が相続税の課税対象になりますので追徴税額も高額になってしまいます。くれぐれも「名義預金」には注意してください。
(2)土地
税務調査による否認額は預貯金に比べれば大きくはありませんが、土地は財産評価額が非常に大きいため評価方法等を少し誤っただけで税額が大きく異なってしまうことも起こりえますので、下記の点をはじめ充分な注意が必要です。
①評価ミス
財産の評価額が大きければ、数パーセントの評価ミスで大きな税額の差となります。
土地については一般的に「相続税法財産評価基本通達」をベースに評価することになりますが、評価方法は非常に細かく定められており、かつ特殊評価方法も多くあります。
近年は「広大地」評価に関するミスが目立ち、我々専門家も充分な注意を払って対処しています。
②小規模宅地選択ミス
小規模宅地評価減規程を利用すれば一定の面積について土地評価の50%~80%相当の評価減を期待することができますが、適用を誤ると相当な金額のミスとなってしまいます。
相続案件を専門に扱っている税理士の立場からすると当然のことなのですが、税理士に依頼せずに納税者自らが申告を行っている場合、もしくは相続に不慣れな税理士が申告を行っている場合等、実際に小規模宅地に関する適用ミスも数多く発生しています。
4.さいごに
相続税の税務調査官は日々税務調査を行っています。一般納税者の方が一生に一度もしくは二度あるかないかの相続税申告において財産を隠そうと思っても、税務当局がその気になり税務調査を行えば、簡単に財産計上漏れを発見してしまうでしょう。
当事務書にもたくさんの方が相続の相談にいらっしゃいますが、名義預金等の形で既に財産を他の親族の方へ移してしまっているケースも中にはあります。
(税金を少しでも少なく・・・)
という気持ちはわかりますが、
(いつか税務署が調べに来るのではないか・・・)
とビクビクしながら日々を過ごすよりも、信頼のできる専門家に相談し、合法的な節税を行いながら適正に申告をしたほうが、健全で毎日を安心して過ごすことができると思いませんか?
Ⅰ.はじめに
前回までで事業承継対策の法務的・税務的な論点を見てきました。
本稿では実際に事業承継対策を行う場合のプロセスを紹介します。
なお事業承継は主に下記の2点から考えていかなければなりません。
○ 人的な承継対策(後継者をどのように選定し、育てていくか)
○ 物的な承継対策(後継者へ株式・経営権をどのようにしてスムーズに引き継ぐか)
本稿では上記のうち、物的な承継対策を進めていく部分に焦点を絞って説明していきます。
Ⅱ.ケース別承継方法
事業承継対策において概ね方向性が定まってきますと、どのようにして実際に事業を承継していくか、承継方法の検討に入ります。
承継方法は下記のケースごとで大きく異なります。
○ 後継者が親族の者であるのか
○ 後継者が親族以外の者であるのか
○ 社内に適正な後継者がおらず、会社を売却することを選択するのか
○ 承継者がおらず、廃業を選択するのか
1.親族内での承継
後継者が親族の者である場合、承継方法(株式の移転方法)としては第一に贈与を考えます。ただし多額の贈与を行いますと贈与税の負担が相当重くなってしまいますので、贈与とともに譲渡を組み合わせて行う場合も数多くあります。
事業承継対策にあたって税務に重点を置くのであれば、事前に株価引き下げを検討し、トータルで納税額が最も少なくなると思われる方法で移転計画を立てます。
2.親族外への承継
後継者が従業員等の親族外後継者である場合、承継方法としては第一に株式を譲渡することを考えます。
ただしこの場合後継者が株式買取り資金を準備しなければなりませんので、どのようにして後継者が資金を準備するかが大きな問題点となります。
これについては一般的には報酬を(合理的な理由が説明できる範囲内で)増額し、数年かけて買取りをすすめていくことが多いようです。
また他の方法としては、支援を受けることが可能であればMBO(マネージメントバイアウト)という手法も有効です。
MBOは、後継者(会社)が金融機関等から融資支援を受け、その資金を基にして現経営者から株式を買い取る手法です。これにより後継者が株式(経営権)を確保することができ、後継者を中心とした新体制を確立することができます。
3.会社売却(M&A)
会社内に適正な後継者がいない場合、事業を存続させていくためには会社売却(M&A)が最適な場合もあります。
M&Aが成立するかどうかはその事業の売り手と買い手の交渉で決まりますから、前回までで説明した自社株の算定方法とは異なったプロセスにより企業価値(株価)を算定します。
企業価値の算定方法は、将来生み出すと予想されるキャッシュを基に算定するDCF法、将来予想される利益と資本を基に算定する収益還元法、企業の財産価値を基に算定する時価純資産法等、複数の方法があり、様々な角度から企業価値を算定します。
M&Aが成立すれば、現経営者は多額のキャッシュを手にする一方で、事業からは完全に離れることになります。
4.廃業
社内に適正な後継者がおらず他の方法を検討した結果、事業を辞めることが最善であるという結論に至る場合もあります。
廃業を選択することになった場合、いかに問題なく廃業するかを検討していきます。
例えば下記の事項を検討します。
○ 借り入れを返済し、担保・保証を整理する
○ 従業員の再雇用先を確保する
○ 事業のうち存続できる部分・売却できる部分はないかを検討する
廃業手続き自体はそれほど難しいものではありませんが、問題なく廃業するための準備は簡単でない場合が多くありますので、早くから会社の方向性を定めることも重要なことだと思います。
Ⅲ.事業承継の進め方
物的承継に関する事業承継の進め方の一例を紹介します。
1.現状把握
下記のポイントを中心にして企業の置かれている状況を整理し、現状を把握するとともに問題点を検討します。
○ 会社の財務状況・株価はいくらか
○ 現時点で資本政策上、問題点・リスクはないか
○ 現時点での経営上の問題点は何か(事業承継を行うことによってどのような変化・影響があると予測 されるか)
○ 現経営者の財産状況・親族関係はどうなっているか
○ 後継者の財産状況(株式の引継ぎは可能か)
2.承継計画の立案
現状把握を基にして「承継」という目標に向かって具体的な計画を立てていきます。漠然とした計画ではなく、時間軸を基に具体的な数値を定めて計画を立てるべきです(事業承継対策は長期間に及びますので、途中で計画が変更されることもよくあります)。
3.実行
承継計画に基づいて手を付けることができる部分から実行していきます。
4.検証・修正
事業承継対策は一般的に長期間に及びますので方向性が変わることもあります。修正すべき事項が発生した場合は計画を見直し、「承継」という目標に向かって軌道修正します。
Ⅳ.さいごに
5回に分けて事業承継対策を考えてきましたが、承継対策は長期に及びますし、想定される問題点は多岐に渡ります。
(当社は後継者が決まっていないから・・・)
と事業承継の問題点を先延ばしにせず、検討できる部分からでよいので早い段階から専門家に相談し、事業承継の問題を考えていただきたいと思います。
そこで本稿では自社株の評価額を引き下げる方法を紹介します。
なお自社株の評価方法は前回のコラムを参考にしてください。
2.自社株評価減額対策
(1)基本的な考え方
自社株は相続税財産評価基本通達に基づいて評価されますが、評価の基礎となる算定要素は細かく定められています。
自社株評価の引き下げを検討する場合、一般的な対策としてはこれらの算定要素の数値を引き下げることができないかをまず検討します。
(2)算定要素の引き下げ
○ 類似業種比準価額方式
類似業種比準価額方式は、「配当」「利益」「純資産」の3要素を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)配当を引き下げる
(イ)利益を引き下げる
(ウ)純資産を引き下げる
ことを検討します。
○ 純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の時価純資産を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)時価純資産を引き下げる
ことを検討します。
(3)評価引き下げ対策-具体例
(2)の考え方を基にして株価評価を引き下げる可能性がある対策を紹介します。
○配当をやめる(もしくは配当率を下げる)
配当を引き下げれば配当要素は引き下がります。しかし一方で会社の内部留保は高まるため純資産価値が高くなります。そこで株主=役員の会社においては、配当は出さずにできる限り役員報酬として支給する(内部留保を下げる)ように考えます。
○役員報酬を増額する
合理的な基準により役員報酬を引き上げれば会社の利益は下がり、株価評価が下がることが想定されます。
○役員退職金を支給・準備する
役員退職金の財源を準備しておき、役員退任時に役員退職金を支給します。すると役員退職金という大きな損金が計上されますので、役員退職金の支給により株価評価が下がることが想定されます。
役員退職金は税効果・株価対策という点だけでなく、役員(遺族)の生活資金・納税資金としても必要ですので、非常に有効かつ重要な対策だと考えます。
○高収益部門を切り離すなどの組織再編を行う
会社分割・営業譲渡・株式交換等の組織再編を行うことにより株価評価が下がる場合があります。特に高収益部門を切り離せば株価評価が下がることが期待できます。
しかし他の対策にも共通して言えることですが、組織再編の場合は特に対策を見誤ると、逆に株価が上昇してしまったり、行った対策が経営上マイナスに働いてしまうこともありえますので、事前に綿密な検討・準備・シミュレーションが必要です。
○含み損のある資産を売却・処分する
含み損のある資産を売却すれば損失が実現しますので、株価評価が下がることが想定されます。
○不良債権・不良在庫の処分
上記と同様に不良債権・不良在庫を処分すれば損失が実現しますので、金額によっては株価評価が下がることが想定されます。
○損金性の高い保険の活用
損金性の高い保険を活用すれば株価対策として有効です。しかし損金性が高くかつ貯蓄性も高い保険については、最近特に税務リスクが高まっていますので充分注意すべきです。
○借入金による賃貸不動産の取得
借入金で賃貸不動産を取得すれば、借入金は額面評価、取得不動産は路線価・固定資産税評価額等で評価(ただし取得後3年間は時価で評価)されることになり、取得前よりも全体の時価純資産額が下がり、株価評価が下がることが想定されます。
(4)移転方法
相続対策・事業承継対策としては、自社株評価を引き下げた後、贈与・譲渡等の方法で株式を後継者・役員・持ち株会等へ移転します。
なお対策は株価評価の引き下げだけでなく、スムーズな相続対策・事業承継対策を進めるために、移転スケジュールまで並行して検討すべきです。
3.さいごに
以上株価評価を引き下げる可能性のある対策を検討しましたが、対策は「株価対策」という一方向のみで考えるのではなく、多方面からよりよい方法を考えるべきです。
合理的な理由が伴っていない対策は税務上否認されるリスクを伴いますし、相続対策としては有効であっても相続対策効果以上に他の税金が上昇したり、行った対策が事業戦略上マイナスに働いては対策を行う意味がないと思います。
まずは綿密な検討を行い、経営上プラスに働くような対策であれば積極的に実行していただきたいと思います。
1.はじめに
オーナー社長の相続税対策を考える場合において、自社株の評価は非常に重要な意味合いを占めます。そこで本稿では相続・贈与において自社株がどのように計算されるのかを説明します。まずは評価の概略として
「どのような基準で株価が計算されるのか」
を理解していただきたいと思います。
2.自社株評価算定手順
○ステップ1:株主の判定
最初に株主の判定をします。ただし下記に示す判定には例外もありますので、株主構成によっては株主の判定結果が変わります。ご注意ください。
①第一段階:
その会社の中に、
「同族株主に該当する者がいるか」または「同族株主に該当する者がいないか」
を判定します。
②第二段階:
財産を取得する者が、
「同族株主に該当するか」または「同族株主に該当しないか」
を判定します。
③第三段階:
同族株主に該当する場合、その者が
「中心的な同族株主に該当するか」
または
「少数株主に該当するか(中心的な同族株主に該当しないか)」
を判定します。
「中心的な同族株主に該当するか」
「少数株主に該当するか(中心的な同族株主に該当しないか)」
で株価の評価方法は全く異なりますので厳密な判定が必要です。
(注1)「同族株主」とは、持ち株割合が30%以上(一定の要件に該当する場合には50%以上)のグループに属する株主のことです。
(注2)「中心的な同族株主」とは、同族株主の一人の株主(一定の親族を含む)の持ち株割合が25%以上である場合のその株主のことです。
○ステップ2:会社の規模を判定します
会社の取引金額・純資産価額等を基にして株式評価上の会社の規模を判定します。判定により、会社は次の区分に分けられます。
・大会社
・中会社(さらに大・中・小の3区分に分かれる)
・小会社
○ステップ3:特別な会社に該当しないか、財務内容等を判定します
特別な会社の例:
・土地の保有割合が大きい会社(土地保有特定会社)
・株式の保有割合が大きい会社(株式保有特定会社)
・配当・利益・純資産のうち、2つ以上がマイナスの会社など
○ステップ4:その会社の判定基準に合った評価方法で株式を評価します
☆評価方法
株式の評価方法には次の3種類があります。
①類似業種比準価額方式
類似業種比準価額方式とは、
「自社の事業内容と類似する業種の上場会社の株価と、自社の財務内容を比較して株価を比較計算する方式」
と理解してください。
②純資産価額方式
純資産価額方式とは、
「自社の現在の時価純資産を基に株価を計算する方式」
と理解してください。
「純資産価額方式」では、自社が所有するすべての財産・負債の時価を算定して計算します。特に不動産や株式は時価と帳簿価額とが大きく乖離する場合もありますので、厳密に評価することが求められます。
③配当還元価額方式
配当還元価額方式とは、
「自社の過去の配当金額を基に株価を計算する方式」
と理解してください。
☆会社に応じた評価方法
上記で判定した「株主区分」「会社区分」等により株式の評価方法が決定します。
① 通常の会社の場合{ステップ3(特別な会社)に該当しない場合}
(イ)中心的な同族株主の場合(ステップ1参照)
⇒ 会社の規模(ステップ2参照)に応じて次のいずれかの方法で計算します。
○ 「類似業種比準価額方式」
○ 「純資産価額方式」
○ または「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」をミックスする方式
(ロ)少数株主に該当する場合(中心的な同族株主に該当しない場合)(ステップ1参照)
⇒ 配当還元価額方式で計算します。
通常、類似業種比準価額・純資産価額に比べ、配当還元価額は非常に低くなります。
つまり、
支配力がある株主については原則的な高い評価方式で、支配力がない少数株主については特例的に低い評価方式で評価することになります。
②特別な会社の場合{ステップ3(特別な会社)に該当する場合}
通常の会社の場合の方法をとらず、特別な会社において定められている評価方法をとります。多くの場合、時価純資産を基に諸調整を加えて評価されることになります。
3.さいごに
次回は自社株評価を減額する対策について検討します。なお本稿で記載した評価方法は、原則的な部分しか記載しておりません。自社株評価方法は原則があり、特例があり、そのまた特例があり、非常に複雑になっており一つの判定を誤ると評価方法・評価額が全く変わってしまうこともありえます。自社株がどのようにして算定されるのかその仕組みを理解していただくことは非常に有意義なことですが、実際の事業承継スキームを税務面から検討する際は、やはりここは税理士に相談していただきたいと思います。なお事業承継に関する税制は現在様々な面から議論されており、近々大きな改正が行われるものと推測されますので税制改正の動向にも目を向けていただきたいと思います。
1.はじめに
前回に引き続き、種類株式を使った事業承継対策を検討します。
実際に種類株式を発行し活用できるかどうかは諸条件によって変わってきますので、会社の状況に当てはめ、本稿では記載しきれていない諸条件まで確認してご判断ください。
2.ケース別種類株式活用法
(1)少数株主を整理したいケース
○ 全部取得条項付株式を活用
既に相続等で分散されてしまった株主を整理したいケースです。全部取得条項付種類株式という種類株式を発行することができれば、少数株主から強制的に株式を買い取ることが可能です。
なお買い取りにあたっては買い取り金額の交渉は必至ですが、会社法に即して株式を強制的に買い取るという行為が可能になります。
(2)好ましくない株主を排除したいケース
○ 全部取得条項付株式を活用
例:過半数は社長一族が保有しているが、先代からの番頭さんである従業員株主が株式を10%程度所有しているケース。
「少数株主を整理したいケース」の応用です。全部取得条項付種類株式を活用できれば、好ましくない株主を排除し、経営上の支配力をより強固にすることができます。
(3)将来株式が分散されるのを防ぎたいケース
○譲渡制限株式を活用
定款に株式の譲渡制限を定めておけば、株式を譲渡する場合に会社の承認が必要となりますので、会社に関係のない第三者に株式が渡ってしまう危険性を減らすことができます。ただし相続については譲渡制限の規制はかかりませんので、相続による株式の分散を防ぐためには、下記の売り渡し請求を同時に定めておかなければなりません。
○金庫株(自己株式)を活用
種類株式ではありませんが、自己株式を使って将来株式が分散されることを防ぐことができます。
具体的には、会社が相続発生時に相続人から強制的に株式を買い取ることができるという、売り渡し請求権を定款で定めることにより、会社にとって関係のない(経営上ふさわしくない)者へ株式が相続されてしまうのを防ぐことができます(当然ながら買い取り金額をいくらにするかという問題は残りますので、資金面についても事前に準備しておく必要があります)。
(4)事業を承継する息子へ経営権をスムーズに渡したいケース
○議決権制限株式(無議決権株式)を活用
○剰余金配当優先株式を活用
○遺言を活用
議決権のある株式を後継者へ、議決権のない株式を非後継者へ渡せば、議決権並びに経営権を後継者へスムーズに渡すことができ、一方で財産権については平等に近づけて分割を行うことが可能になります。
とはいえ財産の分割についての問題は非常に発生しやすいので、非後継者へ渡す株式については、議決権がない代わりに配当を優先して受けることができる「剰余金配当優先株式」にしておくことや、遺留分対策として遺言を行っておくなど、将来の相続発生時に少しでも財産分割について問題が起こらないように事前対策を行っていくことが重要だと考えます。
(5)後継者が成長するまで経営を監視したいケース
○拒否権付き株式を活用
例:息子である後継者へ経営権を早く引き継ぎたいが、経営面で一抹の不安があり、一部の最終的な意思決定権はまだ自分が持っておきたい場合。
例:血のつながっていないNO2の人間に経営権を引き継ぐ予定であるが、社長就任後の手腕に一抹の不安がある。しばらくの間は経営を監視する意味で一部の意思決定権はまだ自分が持っておきたい場合
現在の経営者が拒否権付株式を一部保有し続けることで、後継者の経営状況を監視することができます。ただしいつまでも経営に口を出し続け、後継者以下新経営陣の経営を阻害することのないようにしなければなりません。
3.資金の問題
上記のスキームを使うことができれば、株主から株式を強制的に取得することが可能になりますが、当然買い取り資金が必要になります。
買い取り金額は「時価」が原則となりますが、「時価」をいくらとみるかで協議が必要なケースも想定されます。
①「いくらで買い取るか」という問題
②「買い取り資金をどのように調達するか」という問題
も同時に検討すべきです。
4.さいごに
次回は自社株の評価方法について説明します。
1.はじめに
事業承継は企業を継続させていくために非常に重要なテーマですが、諸問題が複雑に絡み合い対策を講じるまでに時間がかかるため、その実行までに困難を極めるケースが多いようです。
そもそも何から手をつければよいかわからないとお悩みの社長が多いのが実状ですが事業承継問題を検討しますと、大きく分けて次の2つの問題に集約されます。
① 後継者を決定し育成する問題(人的な承継問題)
② 経営権(株式)をスムーズに引き継ぐ問題(物的な承継問題)
①の「人的な承継問題」については、社長以下経営陣の課題である部分が大きいのですが、
②の「物的な承継問題」については、外部専門家と連携して少しでも早くできることから対策を講じていくべきだと思います(特に、既に後継者が決まっている場合)。
そこで本稿では事業承継問題のうち、
② 経営権(株式)をスムーズに引き継ぐ問題(物的な承継問題)
に着目し、数回にわたって対策を検討します。
2.種類株式を使った事業承継対策
昨年施行された新会社法の中で「種類株式」という株式の取扱が定められています(会社法108条)。
「種類株式」とは株式の種類ごとに権利内容が異なる株式の総称です。
「種類株式」は事業承継の面からもその活用が期待されていますが、これまでは税法の取扱が不明確であったため実務上活用が進んでいませんでした。
しかし今回平成19年度税制改正で「種類株式」の税務上の取扱が一部明らかになりましたので、実際に「種類株式」を使って事業承継を進める企業が増えてくるものと思われます。
3.種類株式の評価
「種類株式」のうち評価が明らかになったのは次の3類型です。
詳細な評価方法については、下記の国税庁のHPを参照してください。
(http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/5494/index.htm)
(1)配当優先・無議決権株式の評価方法
① 株式の特徴
○ 他の株式に優先して配当を受けることができる(配当優先株式)
○ 議決権なし(無議決権株式)
② 株式の評価方法
(ア)配当優先株式の評価方法
配当の異なる株式ごとに評価する(配当以外の要素については普通株式と同様に評価する)
(イ)無議決権株式の評価方法
○ 原則・・・普通株式と同じ評価
○ 特例・・・一定の条件を満たした場合、議決権がないことを考慮し、評価を5%減額することができる。ただしこの場合、無議決権株式以外の株式(普通株式)の評価にその減額分を加算する。
つまり、原則として全体の株式評価額は変わらないことが前提となります。
(2)社債類似株式の評価方法
① 株式の特徴
○ 配当は優先される
○ 残余財産の分配は制限される
○ 一定の期日に発行価額で償還される
○ 議決権なし
○ 他の株式を対価とする取得請求権を有しない(株式を取得する権利がない)
② 株式の評価方法
社債として評価される
この場合、社債類似株式は社債に準じて発行価額で評価されることになります。
「普通株式」を取得した相続人は(一般的に高額となる)株式評価、「社債類似株式」を取得した相続人は(一般的に低額となる)社債評価となり、相続人間における遺産分割の評価上の公平感、及び遺留分の問題等が解決されないことから、事業承継という観点において社債類似株式がどこまで有効に使えるのかは、筆者の意見としては疑問を感じます。
(3)拒否権付き株式
① 株式の特徴
一定の決議事項について拒否権を有する
② 株式の評価方法
普通株式と同じ評価
4.考察
今回明らかになった「種類株式」の評価方法は、次のスタンスをとっています。
○ 原則として「種類株式」も「普通株式」と同じ評価をするが、「種類株式」の特殊性から一定の要件を満たす場合には株式間の評価の調整(加減算)を認める
○ 「種類株式」を用いて株式全体の評価が下がることは意図されていない(税務上のメリットはあまり期待できない)
「種類株式」を使った事業承継対策は、スムーズな経営権の移転を行うという点においては有効ですが、改正の趣旨からすると相続財産の評価を減額する税効果については過度に期待しないほうがよいようです。
5.さいごに
次回は「種類株式」を使った具体的な事業承継対策を検討します。
今回中小企業の事業承継において特に活用が期待される「種類株式」の3形態に関して評価が明らかとなり、今後実際に「種類株式」の活用が進んでいくものと思われます。
しかし会社法では少なくとも9形態の「種類株式」が定められていますので、税務においても形態別の種類株式の評価方法は早急に明記されるべきであると思います。
税務の取扱が不明確だからなかなか種類株式が使えない、ということはあってはならないことだと思いますが、いかがでしょうか。
1.はじめに
税金には申告期限が定められており、その税金について定められた申告期限までに税金を支払わなければならない。これを怠ると様々なペナルティ、すなわち追加の税金が加算されることになる。
追加の税金については名称・内容・要件が複雑であり、実際にいくらペナルティが課されるのかは非常にわかりづらい。
そこで今月は税金のペナルティについてまとめてみた。
2.税金のペナルティ
税金のペナルティは、罰則的な性格の税金(加算税)と、納付が遅れたことによる利子的な性格の税金(延滞税・利子税)に大別される。
(1)罰則的な税金(加算税)
加算税は次の税金に区分される。
①過少申告加算税(国税通則法第65条)
(イ)定義
過少申告加算税とは、期限内に申告書を提出したがその申告にかかる税額が過少であったため、その後修正申告書を提出したとき(または税務署から更正されたとき)に追加で課される税のことを言う。
(ロ)税率
増加税額×10%(期限内申告税額または50万円のいずれか多い額を超える部分については15%)
ただし税務署からの更正を予知せずに自主的に申告・納付を行った場合には、上記にかかわらず過少申告加算税は課されない。
②無申告加算税(国税通則法第66条)
(イ)定義
無申告加算税とは、期限内に申告書を提出しなければならなかったが申告書を提出せず、申告期限を過ぎて申告書を提出した場合(または税務署から税額について決定があった場合)に追加で課される税のことを言う。
(ロ)税率
税額×15%(税制改正により、平成19年1月1日以後納付すべき税額が50万円を超える場合、超える部分については20%とされた)
ただし税務署からの決定を予知せずに自主的に申告・納付を行った場合には、税率は5%に軽減される。
③不納付加算税(国税通則法第67条)
(イ)定義
不納付加算税とは、源泉徴収の方法により預かった国税を法定納期限までに完納しなかった場合に追加で課される税を言う。
(ロ)税率
税額×10%
ただし税務署からの納税告知を予知せずに自主的に納付を行った場合には、税率は5%に軽減される。また税制改正により、平成19年1月1日以後において一定の要件を満たす正当な理由があるときは、不納付加算税は課されないこととなった。
④重加算税(国税通則法68条)
(イ)定義
重加算税とは、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が課される場合において、これらの事実を隠ぺいまたは仮装したと認められた場合に追加で課される税を言う。
なお重加算税は過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税に代えて課されるため、重加算税が課される場合は、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税は課されない。
(ロ)税率
税額×35%(ただし無申告の場合は40%)
(2)利子的な税金
①延滞税(国税通則法60条)
(1)定義
延滞税とは、本来納付すべき税金を法定納期限までに完納していない場合に課される遅延利子的な税金を言う。
(2)税額の計算
未納税額×年14.6%(注1)×計算期間(注2)÷365
(注1)法定納期限後2ヶ月間は、年「7.3%」と「前年の11月末日の公定歩合+4%」のいずれか低い割合が適用される。
(注2)原則として法定納期限から完納日までの日数(要件を満たせば一定期間が除算される)
②利子税(国税通則法64条)
(1)定義
延納もしくは物納または届出により申告書の提出期限の延長が認められた場合に課される利子的な税金を言う。
(2)税額の計算
年「7.3%」と「前年の11月末日の公定歩合+4%」のいずれか低い割合で日割り計算される(相続税・贈与税の利子税及び詳しい計算は、本稿では省略する)。
3.さいごに
納付すべき税金を納付しなかった場合のペナルティは、実際に計算をしてみると予想以上に高額になることが多い(特に重加算税の場合)。
しかし、たとえ遅延したとしても税務署からの指摘ではなく自主的に申告納付した場合には、ペナルティは緩和されるように定められているため、申告漏れが見つかった場合には自主的に申告することを薦めたい。
1.はじめに
平成15年に創設された新しい贈与税の課税制度である「相続時精算課税制度」も施行から4年を経過しようとしている。
贈与税は「暦年課税制度」、「相続時精算課税制度」の2種類があるが、どちらの制度を選択するにしても申告義務がある場合には暦年(1月1日~12月31日)で一旦区切り、翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告を行わなければならない。
贈与を行う場合に検討すべき「相続時精算課税制度」の概要、選択時の判断材料をまとめてみた。
2.制度の概要
(1)相続時精算課税制度の概要
贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行う方法、と定義される。
(2)適用対象者
この制度の適用対象者は、贈与年の1月1日時点において贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の推定相続人である子(代襲相続人を含む)でなければならない。
(3)適用対象財産
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はない。
(4)税額の計算
「相続時精算課税制度」に基づく贈与を行った場合には、下記の方法で贈与税が計算される。
①贈与税額の計算
{贈与財産の価額―2500万円(特別控除額)(注)}×20%=贈与税額
(注)前年以前において既にこの特別控除額を控除している場合は、2500万円から既に控除した金額を差し引いた残額が限度となる。
つまり累積で2500万円までの贈与については、贈与時に贈与税を支払わなくてよい。
②相続税額の計算
「相続時精算課税制度」の適用を受けている贈与者が亡くなった場合には、下記の方法で相続税が計算される。
(財産の価額)
相続開始時点で有する相続財産の価額+「相続時精算課税制度」の適用を受けた贈与財産の価額(贈与時の価額で持ち戻し)=相続財産の価額・・・A
(税額の計算)
Aに対する相続税額-既に納付した相続時精算課税にかかる贈与税相当額(払いすぎている場合は還付される)
(5)適用手続
「相続時精算課税制度」を選択しようとする受贈者(子)は、その選択にかかる最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出しなければならない。
3.「相続時精算課税制度」の注意点
(1)申告を必ずする
「相続時精算課税制度」は、累積で2500万円までの贈与については贈与税を支払わなくてもよい。そのため、申告をしなくてもよいと考えてしまう納税者の方々が時々おられる。
期限内に「相続時精算課税制度」の申請をしなかった場合、その年中の贈与については「相続時精算課税制度」の適用は原則として認められず、「暦年課税」が行われたものと判断される。その結果多額の贈与税があとから課税される危険性があるため、手続きを怠らないように充分注意が必要である。
(2)将来相続税がかかると思われる方は慎重に判断すべき
「相続時精算課税制度」を選択すれば、贈与した財産は将来の相続時において贈与時の価額で課税しなおされる。
つまり「相続時精算課税制度」を選択すれば、生前贈与しても相続税の計算時に持ち戻しされることになる。
一方、「暦年課税制度」であれば、相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の計算に持ち戻しされることになるが、それ以前に贈与された財産は相続税の計算に持ち戻しされることはない。
相続税がかからない方は、持ち戻しされようがされまいが、将来の相続時に税金はかからないので税金の問題は関係ないが、相続税がかかると思われる方は、「相続時精算課税制度」を選択すれば、将来の相続税の負担が大きく変わってくることも考えられる。そのため相続税がかかると思われる方は、「相続時精算課税制度」を選択する場合には将来の税負担を考慮に入れながら慎重に判断すべきである。
(3)毎年110万円の基礎控除がなくなる
「暦年課税制度」においては、毎年110万円の基礎控除があるため、110万円以内の贈与については贈与税を納める義務はなく、申告書も提出する義務はない。
一方「相続時精算課税制度」を選択すると、年間110万円の基礎控除はなくなり、少しでも贈与をすれば、贈与をした年については申告書を提出しなければならなくなってしまう。
(4)撤回できない
「相続時精算課税制度」を一旦選択すれば、「暦年課税制度」に戻ることはできない。そのため「相続時精算課税制度」を選択する場合には慎重に判断すべきであり、出来れば専門家に相談することをお勧めしたい。
(5)どのような財産を贈与するか
前述したように「相続時精算課税制度」を選択すれば、贈与した財産は相続時において贈与時の価額で課税しなおされる。
そのため将来価値が上がっていくと見込まれる財産(例えば収益力のある不動産、将来性のある自社株など)を贈与した場合については、過去の(贈与時の)低い価値で課税しなおされるので、税務上メリットがあると言えるが、将来価値が下がっていくと見込まれる財産については、過去の(贈与時の)高い価値で課税しなおされるので、税務上デメリットが生じてしまう。
資産家が「相続時精算課税制度」を選択する場合、どのような財産を贈与するかはタックスプランニングにおいて重要な判断である。
以上「相続時精算課税制度」について注意すべき点を挙げてみた。選択を誤ると多額の税金がかかってしまう規定であるため、適用を受ける際には充分注意していただきたい。
6.考察
上記例で見たとおり、個人事業者が資本金1000万円未満の法人を設立することによって、消費税の納税義務を2期間免れることができる場合がある。個人事業と法人は全く別人格であるので、個人事業における売上と法人の売上とは全く別物と考えるためである。
消費税の納税義務がある個人事業者の方は、この点を検討してもよいのではないだろうか。
7.さいごに
新会社法施行前において株式会社(特例株式会社を除く)は資本金が1000万円以上必要であったため、株式会社を設立した場合には設立第1期から消費税を納めなければならなかった。
一方、資本金1000万円未満の有限会社については設立第1期、第2期は消費税の納税義務はなかった。
新会社法施行後においては資本金規制が撤廃されたため、資本金が1000万円以上か否かで納税義務の有無を判定する現行の消費税法の基準が特異であると考えられる。
資本金が1000万円未満の法人について優遇されている(と言える)現在の消費税法の規定は、近い将来すべての法人について設立第1期から消費税の納税義務が課されるようになることも起こり得るのではないかと懸念する。
逆に言えば法人化を検討している個人事業主の方は、消費税の観点のみで見れば、現在の税制のうちに資本金1000万円未満の法人を設立すると消費税のメリットを享受できる可能性がある(ただし既存の会社を合併・分割した場合等においては、たとえ資本金が1000万円未満の法人を設立した場合であっても、設立初年度から消費税の納税義務が課される場合もあるので注意したい)。
前回及び今回のコラムでは消費税の観点から法人化のメリットを紹介したが、法人設立を検討するにあたっては税金面だけでなく経営面、労務面など判断すべきポイントは非常に多い。単に税務メリットのみに固執することなく多方面から検討を重ね、最終的には専門家に相談することを強く勧めたい。
1. はじめに
周知のとおり新会社法が平成18年5月1日に施行され、法人を設立するにあたっては法律上、資本金が不要になった。資金面・法務面など様々な側面から法人設立が容易になったことに伴い、法人の設立が非常に増えている。
税金面に関して言えば、安易な節税目的から設立される同族会社については、「実質一人会社のオーナー役員に対する役員給与の一部損金算入制限」(前回コラム参照)により、法人設立による節税メリットは大幅に薄れることになったのであるが、それでもなお法人化による税務メリットを享受するケースは多い。
中でも消費税に関しては、法人を設立すれば大きな税務メリットを享受するケースが考えられる(個人事業者から法人設立の相談を受ける場合、実はこの点についての相談が非常に多い)。
さて消費税に関してどんなメリットがあるのだろうか?
2. 消費税の納税義務者
現行の消費税法において消費税を納めなければならない者は次のように定められている。
「事業者(個人事業者及び法人を指す)は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務がある」(消費税法5条)
「ただし事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する」(消費税法9条)
上記条文を読みやすく説明すると下記のとおりである(以下、法人の事業年度は1年として説明する)。
○個人事業者の場合、基準期間(2年前)の課税売上高が1000万円を超えていれば、今年において消費税の納税義務が発生し、今年の課税売上高に対する消費税を納めなければならない。
逆に2年前の課税売上高が1000万円以下ならば、今年において消費税の納税義務はなく、今年の課税売上高に対する消費税を納める義務はない。
○法人の場合、基準期間(前々期)の課税売上高が1000万円を超えていれば、今期において消費税の納税義務が発生し、今期の課税売上高に対する消費税を納めなければならない。
逆に前々期の課税売上高が1000万円以下ならば、今期において消費税の納税義務はなく、今期の課税売上高に対する消費税を納める義務はない。
3. 法人設立時の留意点
法人を設立する場合、消費税に関しては下記の点に注意して設立を検討すべきである。
(1) 法人設立時の消費税 ― 原則的取扱い
法人を設立した場合、設立第1期・第2期については基準期間(以下、前々期と表現する)が存在しない。前々期の課税売上高が存在しないため、設立第1期・第2期においては課税売上高がいくらあろうとも、消費税を納める義務はない。
(2) 法人設立時の消費税 ― 新設法人の特例
ただし資本金が1000万円以上の法人については、前々期の課税売上高が存在しないにもかかわらず、設立第1期・第2期において消費税を納めなければならない(第3期以降は前々期の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで納税義務の有無を判定する)。
要約すると、下記のとおりである。
○資本金1000万円以上の法人を設立した場合、設立第1期から消費税を納めなくてはならない。
○資本金1000万円未満の法人を設立した場合、設立第1期・第2期は消費税を納める義務はない。
法人を設立する場合、資本金が1000万円以上の法人か否かによって、消費税の納税義務判定が異なるので注意が必要である。
4.前半まとめ
資本金1000万円未満の法人を設立すれば、設立後2期間は消費税を納める義務がない(一部例外を除く)。
この点に着目し、次回はケース別の法人設立時における消費税納税義務の具体例を見ていきたい。
(追記)法人設立時においては、多額の設備投資が行われる場合や、売上よりも費用のほうが多いケースが多数見受けられ、このように受け取った消費税よりも支払った消費税のほうが多い場合には、消費税の還付を受けることができる場合がある。
消費税の還付を受けるには、消費税法上の「課税事業者」になっておかなければならないため、法人設立前に出来る限り消費税のシミュレーションをしておくことが必要である。
資金計画・利益計画とともに、消費税についても事前に検討しておくことをお勧めする。
1. はじめに
平成18年度税制改正において中小同族会社を直撃する大増税が盛り込まれた。
「実質一人会社のオーナー役員に対する役員給与の一部損金算入制限」規定がそれである。
各種業界から反発の声が上がったものの、当初の改正案どおり平成18年4月1日以後開始事業年度から新規定が施行された。
中小企業の懐を直撃しかねない増税であるにもかかわらず、一般企業・納税者から不満・反響の声が湧き上がってこない。この増税が広く周知されているのかどうか甚だ疑問である。以下、この改正をまとめてみた。
2. 改正の内容
内国法人である特殊支配同族会社が、業務を主宰する役員に対して支給する給与の額のうち、「業務主宰役員の給与所得控除相当額」は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。(法35条)
3. 改正の詳細
(1) 適用要件・適用対象者
下記(イ)(ロ)両方の要件に該当した場合、この改正の適用対象法人となる。
(イ) 業務主宰役員(以下、通常はオーナーと読み替えて差し支えない)及びその業務主宰役員関連者の持ち株割合が90%以上となる同族会社であること
(ロ) (イ)に掲げる者の総数が、当該企業の常務に従事する役員の過半数を占めていること
(2) 改正の内容
業務主宰役員に支払う給与のうち、「給与所得控除相当額」が法人の損金として認められなくなる。その結果法人において、業務主宰役員の「給与所得控除相当額」の課税所得が増加し、課税所得に対応する税額が増加することとなる。
(3) 適用除外要件
一方、下記のいずれかの要件を満たす場合には、この改正の適用対象法人から除外される。つまり、下記のいずれかの要件を満たす場合には、増税は行われない。
(イ)(法人の所得金額+損金算入された業務主宰役員給与額)が年800万円以下である場合
(ロ)(法人の所得金額+損金算入された業務主宰役員給与額)が年800万円超年3000万円以下であり、かつ当該所得に占める業務主宰役員給与の割合が50%以下である場合
(注)法人の所得金額、業務主宰役員給与額は、直前3年以内に開始する事業年度の平均額で計算する。
法人が獲得した利益が少額である場合(イの要件に該当する場合)、法人が獲得した利益と比較して、業務主宰役員が高額に給与を取っていない場合(ロの要件に該当する場合)には、増税は行わないことと規定している。
4. 改正による影響
増税の影響を受けた場合の数値を例示する。
(前提:黒字会社、税率40%と仮定)
例:1 業務主宰役員の給与額が500万円の場合
損金算入されない金額(増加する課税所得)は154万円、増税額は61万6千円となる。
例:2 業務主宰役員の給与額が1000万円の場合
損金算入されない金額は220万円、増税額は88万円となる。
例:3 業務主宰役員の給与額が2000万円の場合
損金算入されない金額は270万円、増税額は108万円となる。
改正による影響を受けることとなった場合、これまで税負担の小さかった小規模法人のほうが、増税負担をより強く感じるのではないだろうか。
なおこの改正の影響は、会計上の損益計算書には計上されない。計上されるのは法人税の申告書においてである。
つまり、損益計算書上の利益は変わらないが、税金計算上の課税所得が増加するのである。
損益計算書上に反映されないため、実際に税務申告を迎える段階まで増税に気づかないケースが多発するのではないか、この制度が広く周知しきれていないように思われる現状を鑑みると、今後の反響に不安を感じている。
5. 最後に
当該規定の適用対象有無の判定は、状況によっては複雑なケースが想定される。
欠損が出ている場合、過去3期間がない設立間もない法人の場合、持ち株会社の場合等々、判定において複雑な判断を強いられるケースも想定される。
特に設立1年目の新設法人については過去の期間が全くないため、(設立初年度の所得+設立初年度の業務主宰役員給与)で判定されることとなり、初年度から相当の利益が見込まれる中小同族会社においては特に注意が必要である。
まずは今回の改正内容に該当しているのかどうか、自社の過去3期間の財務データを調べるべきであろう。
詳細は法人税法以下に規定されているが、複雑な個別の判定においては専門家に委ねることを勧めたい。
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(・・・なるほど、土地は路線価っていうものを基準にして計算するのか)
(・・・生命保険は、一部税金がかからないかもしれないんだね)
(・・・20年以上連れ添った妻に自宅の持分を贈与しても、2000万円までは贈与税がかからないのか)
本屋さんに並ぶ「わかりやすい相続の本」を読めば、あなたも相続の知識を身につけることができるでしょう。
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ここでちょっと話が脱線します。
私はこの「自宅でカンタン!相続診断書」のホームページ紹介部分をほとんど自分で作りました。
実は私はホームページ作成の技術的な部分は苦手で、いまだによくわかりません。
ある程度本を読みながら作成しましたが、いつも最後のわからない部分は専門家の方の助けを借ります。
そのほうがいいものが出来上がるし、あんしんだから。
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理由は、
①ホームページは、私にとってとても大切なことなので、ある程度自分でわかるようにならなければならないから。
②最初からすべて依頼すると、料金が高額になるから。
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↓
①「私のライフプラン」は、私にとってとても大切なことなので、ある程度自分でわかるようにならなければならない。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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贈与は「少ない金額を時間をかけて長く行う」のが賢明な方法なのですが、多額の贈与を行っても贈与税がかからなかったり、少額の贈与税で済む特例制度があります。
そのひとつが、「住宅取得資金贈与の特例制度」(暦年課税版)です。
「住宅取得資金贈与の特例制度」の概要・・・
父母または祖父母から住宅を取得するための金銭をもらった場合で、次の要件にあてはまれば、550万円までの贈与については贈与税はかかりません。また1500万円までの贈与については、有利な計算方式により贈与税の負担は軽減されます。
主な要件としては・・・
・贈与を受けた年の合計所得金額が1200万円以下
・父母または祖父母からの贈与である
・金銭の贈与である
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに家屋の新築または取得をし、居住していることまたは居住することが確実であること
(注)要件は上記以外にも非常に細かくたくさんあります。上記はあくまで参考です。要件に該当していないのに多額の贈与を行えば、下記例のように多額の贈与税が課される危険がありますので、専門家の意見を聞いて実行することを強く勧めます。
(例)
1.550万円の贈与を受けた場合:
①特例制度を使った場合・・・贈与税0円
②特例制度を使わなかった場合・・・贈与税67万円
2.1500万円の贈与を受けた場合:
①特例制度を使った場合・・・贈与税95万円
②特例制度を使わなかった場合・・・贈与税470万円(大きいですね!)
ところでこの「住宅取得資金贈与の特例制度」ですが、平成17年12月31日までで制度が廃止される予定です(確定ではありません)。
贈与制度はもうひとつ、「相続時精算課税制度」という制度があって、こちらを使えば一度に多額の贈与をすることができるのですが、「相続時精算課税制度」についても検討すべきポイントがたくさんあるため、使ったほうが良いのかどうかは一概に言えません。
贈与はケース・バイ・ケース。
身近な専門家に確認してみてはいかがでしょうか。
そこで贈与をする場合には、税務上問題が起こらないように次のことに注意しましょう。
①贈与証書を作る
贈与は本来口約束でも成り立つ行為なのですが、税務調査などにおいては証拠書類が必要になってきます。
あげた側(例:親)ともらった側(例:子)の意思表示を書面で残しておきましょう。
②印鑑・通帳はもらった人が管理をする
あげた人(親)が通帳等を管理していた場合、子供へ贈与はされていなかったとみなされるリスクがあります。
この場合は贈与したにもかかわらずその財産は親のものとみなされ、相続が発生した場合には親の相続財産に含まれてしまいます。
この「贈与したにもかかわらず、贈与していないとみなされる預金」のことを一般的に「名義預金」といいます。
「名義預金」は相続税調査のときに最も注意して見られます。その結果調査において一番発見されやすい財産でもあります。
(結論)
「名義預金」とみなされないように贈与を行った証拠は正しく残しておきましょう。
(注)表現は簡潔に済ませている部分があります。不明な点がありましたら御連絡ください。
1.創業費・開業費を正しく計上する
事業開始時に発生する費用は「創業費」と「開業費」に区分されます。
①創業費とは・・・
法人を設立するために通常必要となる費用で主に下記のものが該当します。
○発起人報酬
○設立登記にかかる登録免許税、司法書士手数料
○定款認証手数料
○株式払込取扱手数料
○創立総会に関する費用
○その他設立に必要な費用で会社が負担すべき費用
②開業費とは・・・
法人設立後、事業を開始するまでの間に特別に支出した費用で主に下記のものが該当します。
○広告宣伝費
○市場調査費
○接待交際費
○その他開業準備のために特別に支出する費用
上記の区分で考えれば、事業開始前に発生した費用であっても、事務所賃借料・水道光熱費・借入金利子・給与などの「経常的に生じる費用」は創業費・開業費に該当しません。
ではこれらの事業開始前に発生した「経常的に生じる費用」は損金に計上できないのでしょうか?
結論は設立第1期の損金に計上することが出来ます。
法人設立前に支出した「経常的に生じる費用」は、設立第1期の事業年度の申告に含めて計算することができるという取り扱いが出ています(基通2-6-2参照)。
(ただし設立期間が長期にわたる場合の設立期間中の費用や、個人から事業を引き継いだ法人成りの場合の設立期間中の費用は設立第1期の申告に含めることはできません。)
よって法人設立前に発生した「経常的に生じる費用」についても請求書・領収書等をきちんと保存し、その支出の内容がわかるようにしておきましょう。
2.創業費・開業費を損金化する
創業費・開業費は支出した事業年度で全額損金とすることもできますし、5年以内に(未償却残高を限度として)任意に償却することもできます。
設立当初は開業準備費用が嵩み、欠損(赤字)になる場合がよくあります。
このような場合は創業費・開業費は繰延資産として資産計上しておきましょう。
そして毎期の決算利益の状況を見ながら毎期の償却額を決めていきましょう。
3.まとめ
①開業費に該当し損金化できる費用なのか
②開業前費用として設立第1期の費用として損金化できる費用なのか
③開業前費用だが損金化できない費用なのか
は判断に迷うケースがあります。
開業前後は特に行うべきことが多すぎて事務作業がおろそかになりがちですが、出来る限り支出の内容を明確にし、損金化できるものは会社の損金に計上して正しく節税を心がけましょう。
(注)説明不足、誤解を招く表現が含まれている場合が起こり得ます。質問がございましたら相談フォームよりご連絡ください。