一時所得か?みなし贈与か?

1.はじめに
所得や利益が発生した時には通常何らかの課税が行われますが、実務ではどのような課税が行われるのかについて判断に迷う事例に時々遭遇します。
最近所得税が課税されるのか贈与税が課税されるのか判断に迷う次のような事例がありましたので紹介します。


2.事例
相談者は次のような「建物更生共済」に加入しており、満期を迎えたため子が満期保険金を受け取りました。どのような課税になるのでしょうか。
・契約者(保険料負担者)父
・保険金受取人 子
(注)「建物更生共済(以下建更)」とは、JAが販売している建物や家財を保障する損害保険契約で、払い込み期間が長ければ解約返戻金や満期時には満期金のある貯蓄性のある保険商品のことです。


3.最初の判断
当初このお話を聞いたとき、これは保険金受取人である子が、保険料負担者である父から贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されると考えました。しかし相談者は、JAの担当者から一時所得が課税されるという説明を受けていたため、改めて内容を精査してみました。


4.課税関係
まず関係条文・施行令・通達を調べてみました。
「所得税法34条(一時所得)」
・一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう(一部省略)。
これだけでは建更が一時所得とは判断できませんので次に通達をみます。
「所得税法基本通達34-1(4)(一時所得の例示)」
・令第184条第4項に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等は一時所得に該当する(一部省略)。
令184条第4項の説明は省略しますが、本通達では「損害保険満期金(建更を含む)は一時所得に該当する」と説明しています。

次に相続税法を調べてみます。
「相続税法第5条(贈与により取得したものとみなす場合)」
・「障害を保険事故とする損害保険契約の返還金」のうち、当該保険金受取人(子)以外の者(父)が負担した保険料に対応する部分ついては、保険金受取人(子)が、保険料負担者(父)から贈与により取得したものとみなす(一部省略)。

「障害を保険事故とする損害保険満期金」は、相続税法5条で贈与税が課税されると規定され、他方では一時所得の通達において一時所得に該当すると例示されています。この場合通達より法律が優先されますので、「障害を保険事故とする損害保険満期金」は、贈与税が課税されることになります。
一方、「建更」は障害を保険事故としないため相続税法5条による贈与税の課税はないと判断され、一時所得の通達により一時所得と判断されるようです(参考までにJAのホームページでは、建更の満期金は、保険料負担者が誰であるかに関わらず一時所得になると説明されています)。


5.建更の疑問点
ここまでの結論では「建更」の満期金は相続税法5条のみなし贈与の規定がないため、所得税法基本通達の一時所得の例示により、一時所得と判断されているようです。ただし私見ではこの課税判断には疑問を感じる部分があります。


もう一度条文から離れて事実関係にもどってみます。

保険料は父が払っています。建更は返戻金があるため途中解約すれば父は解約返戻金を受け取ることができます。つまり、父は満期になるまでは建更の権利(財産権)を持っていると言えます。
そして父は保険料を払い続け満期を迎えました。満期時において父は建更の権利(財産権)を失い、子が満期金を受け取ります。
さて子が受け取った満期金は本当に一時所得なのでしょうか。父から子への財産の移転すなわち贈与とみなすという考え方はないのでしょうか。
これについては相続税法9条という考え方があります。相続税法9条は、利益の移転があった場合のみなし贈与の包括規定です。
本件に当てはめると、建更の権利という利益が父から子へ移っているので、相続税法5条の適用はなくても相続税法9条の規定により贈与税の課税があるという考え方も取れなくはないとも感じます。しかし通達とはいえ一時所得として例示されているものを一時所得と判断せず、包括的な規定である相続税法9条を持ち出して贈与税を課税するのも乱暴な判断であるとも感じます。


6.最後に
建更満期金は一時所得であるというのは現状では通説のようです。しかし新たな判例等が出れば通達の判断も変わっていきますし、本事例も課税上不自然と言わざるを得ない論点が内在していますので、今後内容を改めて検討したいと考えています。



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