その所得は誰のものか?~実質所得者を考える~

1. はじめに
 先月次のような相談を受けました。
父が自宅に隣接した土地(現在未舗装の空き地)を持っています。隣人からその土地を駐車場として貸してほしいという依頼がいくつもあるため、特に設備を設置することもせずそのまま駐車場として貸そうかと考えています。しかし父は高齢かつ生活には困っていないので、娘である私が(例えばその土地を父から無償で借りたことにして)駐車場収入を得ることはできませんか?


2. 実質所得者課税
上記の質問は、実質所得者課税という考え方が関係してきます。


(実質所得者課税)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する(所得税法12条)。


(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する(所得税法基本通達12-1)。


3.本件への当てはめ
 解釈としては次の2つの考え方がありそうです。
(A説)土地から発生する駐車場収入は、土地所有者である父が取得すべきです。
(B説)土地から発生する駐車場収入は、土地を貸す事業(駐車場事業)を行っているのは娘なので、実際に駐車場経営を行っている娘が取得すべきです。


実質所得者課税の考え方を説明している所得税法12条関係は、「資産の所有者が単なる名義人」であることが大前提となっています。
言い換えると、「資産の所有者が単なる名義人」である場合は、土地から発生する駐車場収入は資産の所有者である父の所得ではなく、実際に駐車場経営を行っている娘が真実の権利者であるとして娘の所得とすることができそうです。
しかし不動産は登記され法的に権利が守られていますので、資産が不動産である場合は、「資産の所有者が単なる名義人」であるということは通常考えにくい解釈であると思います。
すると本件では、土地から発生する駐車場収入は土地の所有者である父の収入とすべきで、仮に娘が駐車場収入をもらったとしても、それは本来父がもらうべき駐車場収入を父からもらっているにすぎないと判断されることになると思います。


4.土地を貸しているのか、設備を課しているのか
では本件とは異なり、たとえば娘がその土地にアスファルトを敷いたりフェンスを作るなど費用をかけて駐車場事業を行う場合はどうでしょうか。
この場合は、娘が父から使用貸借で土地を借りて、娘が費用と労力をかけて自分の駐車場事業を行っていると判断できると思います。
言い換えると、土地の所有者は父ですが、その土地の上に存する駐車場設備の所有者は娘なので、駐車場設備から発生する駐車場収入は娘の所得としてよいのではないかと思います。


5.本件への対応
実際の本件の相談においては、そのまま土地を貸すのであれば実質所得者課税の考え方により父の所得とすべきではないかということ、娘さんの費用負担でアスファルト等最低限簡易な設備を整えて娘さんの管理責任において駐車場事業を行うのであれば、娘さんの所得にすることができるのではないかということをお伝えし、再度考えていただくこととなりました。


6.さいごに
なぜ実質所得者課税という規定があるのでしょうか。
実質所得者課税という規定がなければ、例えば地代家賃等不動産から発生する所得については親族間で自由に所得の付け替えができてしまうことが想定されます。
よってこのような租税回避行為を防止するために制定されているのではないでしょうか。



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