給与所得控除の上限とその影響

Ⅰ.はじめに
平成25年より給与所得控除に上限が定められ、高額給与所得者については給与収入から控除できる給与所得控除が縮小されていくことになっています。
そこで給与所得控除が縮小されることに対する税額への影響と今後想定可能な対応策について検討します。


Ⅱ.制度の概要
1.給与所得控除とは
給与所得控除とは、給与収入から無条件で控除できる税金がかからない控除枠のことです。給与所得控除が大きければ大きいほど給与収入から差し引くことができる金額が大きくなり、所得税・住民税が少なくなります。


2.給与所得控除の上限
(1)H25~H27の場合
 給与収入1500万円を超えると給与所得控除は245万円で上限となり、給与収入から差し引くことができる金額は一律245万円となります。
(2)H28の場合
給与収入1200万円を超えると給与所得控除は230万円で上限となり、給与収入から差し引くことができる金額は一律230万円となります。
(3)H29以降の場合
給与収入1000万円を超えると給与所得控除は220万円で上限となり、給与収入から差し引くことができる金額は一律220万円となります。


Ⅲ.影響
下記事例を用いて年間給与1500万円の人の所得税・住民税負担がどのように増えるか試算します。
(事例)
月額給与125万円(年額給与1500万円)、社会保険料の自己負担分は給与収入の15%、社会保険料以外の所得控除は50万円、他の所得はないものとします(復興特別所得税は加味しません)。


(1)H25~H27の場合
給与収入1,500万円に対し、給与所得は1,255万円(1,500-245)、課税所得は980万円(1,255-1,500×15%-50)、所得税・住民税は、267.8万円となります。


(2)H28の場合
給与収入1,500万円に対し、給与所得は1,265万円(1,500-235)、課税所得は990万円(1,265-1,500×15%-50)、所得税・住民税は、272.1万円となります。


(3)H29以降の場合
給与収入1,500万円に対し、給与所得は1,280万円(1,500-220)、課税所得は1,005万円(1,280-1,500×15%-50)、所得税・住民税は、278.55万円となります。


極端に税負担が重くなるわけではありませんが、社会保険料が年々増えていくことも合わせると年々負担を重く感じるようになるのではないでしょうか。


Ⅳ.想定される対策
中小企業経営者の収入のもらい方については、給与の形でもらえば給与所得控除があるので通常は給与でもらいます。
しかし給与所得控除に上限ができたことから、給与所得控除の上限以上の給与をもらった場合の税金上の優遇はなくなりました。
そこで給与所得控除の上限以上の給与をもらっている経営者の方は、今後は給与以外のもらい方を考えることがでてくるのではないかと推測しています。
例えば次のような収入のもらい方を検討することは可能ではないでしょうか。


(ケース1)不動産所得としてのもらい方
 たとえばこれまでは無償で事業用として使用させていた自宅の一部や駐車場、空き家などの個人保有不動産を第二事務所・倉庫等として法人へ賃貸し、法人から不動産収入を得るようにする一方、その分給与を減らします。
 このようにした場合、不動産所得から差し引く青色申告特別控除や固定資産税等の経費化による節税効果、及び社会保険料の削減効果(不動産所得には社会保険料はかからない)が期待できます。


(ケース2)雑所得としてのもらい方
 社長が法人へ資金を無償で貸付け、その返済を受けていないことはよくあります。
会社はこの借入金に対し社長へ利息を払うこととします。社長は会社から利息をもらう一方、その分給与を減らします。
借入金が多額であれば年利数パーセントとしても給与の一部を受取利息(雑所得)へ所得区分を変えることができます。
このようにした場合、所得税・住民税の節税効果はありませんが、社会保険料の削減効果(雑所得には社会保険料はかからない)は期待できます。


(ケース3)将来の退職所得としてのもらい方
現状もらっている給与のうち確実に貯蓄にまわしている部分(不要不急のため現在はもらわなくても困らない部分)については、給与としてもらわず外部保険等を使って退職金等の積立にしておきます。
現在も多くの経営者の方々は将来退職金としてもらうために退職金の積み立てをしているかと思いますが、外部保険等を使うと保険料の一部は経費となり、将来もらうときは退職金として税金が優遇され、また社会保険料の削減効果も期待できます。


Ⅴ.さいごに
上記の対策はあくまでも一例であり必ずしも効力があるとは言い切れません。
これまでは給与所得控除があるから給与でもらう形が最も有利だと考えられてきました。しかし税制の変化とともに結果・効力も変わりますので、制度の変化に合わせた対策を検討することも必要ではないでしょうか。



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