相続時精算課税制度の注意点

(新日本法規出版社-「e-hoki」、中小基盤整備機構が運営する情報ポータルサイト「J-NET21」内にて連載中)

1.はじめに 
平成15年に創設された新しい贈与税の課税制度である「相続時精算課税制度」も施行から4年を経過しようとしている。
贈与税は「暦年課税制度」、「相続時精算課税制度」の2種類があるが、どちらの制度を選択するにしても申告義務がある場合には暦年(1月1日~12月31日)で一旦区切り、翌年2月1日から3月15日までの間に確定申告を行わなければならない。
贈与を行う場合に検討すべき「相続時精算課税制度」の概要、選択時の判断材料をまとめてみた。


2.制度の概要


(1)相続時精算課税制度の概要
贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行う方法、と定義される。


(2)適用対象者
この制度の適用対象者は、贈与年の1月1日時点において贈与者は65歳以上の親、受贈者は20歳以上の推定相続人である子(代襲相続人を含む)でなければならない。


(3)適用対象財産
 贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はない。


(4)税額の計算
「相続時精算課税制度」に基づく贈与を行った場合には、下記の方法で贈与税が計算される。


①贈与税額の計算
{贈与財産の価額―2500万円(特別控除額)(注)}×20%=贈与税額
(注)前年以前において既にこの特別控除額を控除している場合は、2500万円から既に控除した金額を差し引いた残額が限度となる。


つまり累積で2500万円までの贈与については、贈与時に贈与税を支払わなくてよい。


②相続税額の計算
「相続時精算課税制度」の適用を受けている贈与者が亡くなった場合には、下記の方法で相続税が計算される。


(財産の価額)
相続開始時点で有する相続財産の価額+「相続時精算課税制度」の適用を受けた贈与財産の価額(贈与時の価額で持ち戻し)=相続財産の価額・・・A


(税額の計算)
Aに対する相続税額-既に納付した相続時精算課税にかかる贈与税相当額(払いすぎている場合は還付される)


(5)適用手続
「相続時精算課税制度」を選択しようとする受贈者(子)は、その選択にかかる最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出しなければならない。

3.「相続時精算課税制度」の注意点


(1)申告を必ずする
「相続時精算課税制度」は、累積で2500万円までの贈与については贈与税を支払わなくてもよい。そのため、申告をしなくてもよいと考えてしまう納税者の方々が時々おられる。
期限内に「相続時精算課税制度」の申請をしなかった場合、その年中の贈与については「相続時精算課税制度」の適用は原則として認められず、「暦年課税」が行われたものと判断される。その結果多額の贈与税があとから課税される危険性があるため、手続きを怠らないように充分注意が必要である。


(2)将来相続税がかかると思われる方は慎重に判断すべき
「相続時精算課税制度」を選択すれば、贈与した財産は将来の相続時において贈与時の価額で課税しなおされる。
つまり「相続時精算課税制度」を選択すれば、生前贈与しても相続税の計算時に持ち戻しされることになる。
一方、「暦年課税制度」であれば、相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の計算に持ち戻しされることになるが、それ以前に贈与された財産は相続税の計算に持ち戻しされることはない。
相続税がかからない方は、持ち戻しされようがされまいが、将来の相続時に税金はかからないので税金の問題は関係ないが、相続税がかかると思われる方は、「相続時精算課税制度」を選択すれば、将来の相続税の負担が大きく変わってくることも考えられる。そのため相続税がかかると思われる方は、「相続時精算課税制度」を選択する場合には将来の税負担を考慮に入れながら慎重に判断すべきである。

(3)毎年110万円の基礎控除がなくなる
「暦年課税制度」においては、毎年110万円の基礎控除があるため、110万円以内の贈与については贈与税を納める義務はなく、申告書も提出する義務はない。
一方「相続時精算課税制度」を選択すると、年間110万円の基礎控除はなくなり、少しでも贈与をすれば、贈与をした年については申告書を提出しなければならなくなってしまう。


(4)撤回できない
「相続時精算課税制度」を一旦選択すれば、「暦年課税制度」に戻ることはできない。そのため「相続時精算課税制度」を選択する場合には慎重に判断すべきであり、出来れば専門家に相談することをお勧めしたい。


(5)どのような財産を贈与するか
  前述したように「相続時精算課税制度」を選択すれば、贈与した財産は相続時において贈与時の価額で課税しなおされる。
 そのため将来価値が上がっていくと見込まれる財産(例えば収益力のある不動産、将来性のある自社株など)を贈与した場合については、過去の(贈与時の)低い価値で課税しなおされるので、税務上メリットがあると言えるが、将来価値が下がっていくと見込まれる財産については、過去の(贈与時の)高い価値で課税しなおされるので、税務上デメリットが生じてしまう。
資産家が「相続時精算課税制度」を選択する場合、どのような財産を贈与するかはタックスプランニングにおいて重要な判断である。

 以上「相続時精算課税制度」について注意すべき点を挙げてみた。選択を誤ると多額の税金がかかってしまう規定であるため、適用を受ける際には充分注意していただきたい。








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