法人設立と消費税その2

(新日本法規出版社-「e-hoki」内に掲載)


前回に引き続き法人設立と消費税について説明を続ける。


5.ケース例


下記(1)、(2)のケース別に消費税の納税義務がどのように違ってくるかを検討してみた。
(1)これから新しく事業を始める場合
(2)既に行っている個人事業を法人化する場合


これから新しく事業を始めようと考えている方、既に個人事業を行っているが今後法人化を検討している方は、ご自分の事業に当てはめて考えていただきたい。




(1)これから新しく事業を始める場合
事業を始める場合、個人事業としてスタートするか最初から法人を設立するかの選択肢があるが、消費税の納税義務については下記のように異なってくる。


(イ)個人事業として始める場合
1年目(平成18年)・・・納税義務なし(∵基準期間(2年前)の課税売上高がない)
2年目(平成19年)・・・納税義務なし(∵基準期間(2年前)の課税売上高がない)
3年目(平成20年)・・・2年前の課税売上高>1000万円→納税義務あり
             2年前の課税売上高≦1000万円→納税義務なし


(ロ)資本金1000万円未満の法人を設立して事業を始める場合
第1期(平成18年度)・・・納税義務なし(∵基準期間(前々期)が存在しない)
第2期(平成19年度)・・・納税義務なし(∵基準期間(前々期)が存在しない)
第3期(平成20年度)・・・前々期の課税売上高>1000万円→納税義務あり
              前々期の課税売上高≦1000万円→納税義務なし


(ハ)資本金1000万円以上の法人を設立して事業を始める場合
第1期(平成18年度)・・・納税義務あり(∵新設法人の特例により、自動的に納税義務が生じる)
第2期(平成19年度)・・・納税義務あり(∵新設法人の特例により、自動的に納税義務が生じる)
第3期(平成20年度)・・・前々期の課税売上高>1000万円→納税義務あり
              前々期の課税売上高≦1000万円→納税義務なし


(2)既に行っている個人事業を法人化する場合

(イ)資本金1000万円未満の法人を設立して事業を始める場合
第1期(平成18年度)・・・納税義務なし(∵基準期間(前々期)が存在しない)(注)
第2期(平成19年度)・・・納税義務なし(∵基準期間(前々期)が存在しない)(注)
第3期(平成20年度)・・・前々期の課税売上高>1000万円→納税義務あり
              前々期の課税売上高≦1000万円→納税義務なし


(注)法人を設立すれば基準期間(前々期)が存在しないため、平成18年度、19年度において消費税の納税義務はない。
一方法人を設立せずにそのまま個人事業を続けた場合には、2年前(平成16年、17年)の個人事業の課税売上高が1000万円超か否かで消費税の納税義務を判定する。そのため2年前(平成16年、17年)の個人事業としての課税売上高が1000万円を超えていれば、平成18年、19年において個人事業として消費税の納税義務がある。


つまり状況によっては、個人事業を法人化することによって消費税の納税義務を2期間免れることが起こりうるのである。


(ロ)資本金1000万円以上の法人を設立して事業を始める場合
第1期(平成18年度)・・・納税義務あり(∵新設法人の特例により、自動的に納税義務が生じる)
第2期(平成19年度)・・・納税義務あり(∵新設法人の特例により、自動的に納税義務が生じる)
第3期(平成20年度)・・・前々期の課税売上高>1000万円→納税義務あり
              前々期の課税売上高≦1000万円→納税義務なし




6.考察
上記例で見たとおり、個人事業者が資本金1000万円未満の法人を設立することによって、消費税の納税義務を2期間免れることができる場合がある。個人事業と法人は全く別人格であるので、個人事業における売上と法人の売上とは全く別物と考えるためである。
消費税の納税義務がある個人事業者の方は、この点を検討してもよいのではないだろうか。


7.さいごに
新会社法施行前において株式会社(特例株式会社を除く)は資本金が1000万円以上必要であったため、株式会社を設立した場合には設立第1期から消費税を納めなければならなかった。
一方、資本金1000万円未満の有限会社については設立第1期、第2期は消費税の納税義務はなかった。
新会社法施行後においては資本金規制が撤廃されたため、資本金が1000万円以上か否かで納税義務の有無を判定する現行の消費税法の基準が特異であると考えられる。
資本金が1000万円未満の法人について優遇されている(と言える)現在の消費税法の規定は、近い将来すべての法人について設立第1期から消費税の納税義務が課されるようになることも起こり得るのではないかと懸念する。


逆に言えば法人化を検討している個人事業主の方は、消費税の観点のみで見れば、現在の税制のうちに資本金1000万円未満の法人を設立すると消費税のメリットを享受できる可能性がある(ただし既存の会社を合併・分割した場合等においては、たとえ資本金が1000万円未満の法人を設立した場合であっても、設立初年度から消費税の納税義務が課される場合もあるので注意したい)。


前回及び今回のコラムでは消費税の観点から法人化のメリットを紹介したが、法人設立を検討するにあたっては税金面だけでなく経営面、労務面など判断すべきポイントは非常に多い。単に税務メリットのみに固執することなく多方面から検討を重ね、最終的には専門家に相談することを強く勧めたい。









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