不動産賃貸業の法人化その2

Ⅳ.設立形態
不動産賃貸業を法人化する場合、次の3つの方式が考えられます。それぞれの内容、注意点、メリット・デメリットを説明します。


1.管理委託方式
管理委託方式とは、賃貸不動産を個人がそのまま保有し続け、法人はその賃貸不動産の管理業務を行い、個人から管理収入を得る方式です。
この方式でポイントとなるのは管理収入をどのぐらいとれるのかという点です。
過去の判例を見ると管理収入は概ね家賃収入の5~10%程度となっており、この方式では個人から法人へ移転できる収入は少ないため、高額な不動産所得水準でなければ、法人化による節税メリットを見出すのは難しいといえます。

 節税効果を高めるために少しでも管理料を高く設定するには法人が行う管理業務を明確にして実際に多くの管理業務を行うことですが、管理業務の内容は清掃・代金回収・修繕対応など実際の管理業務として行う内容は限られており、世間相場より管理料を高く設定すれば税務否認のリスクは高くなることは避けられませんので慎重に考えるべきでしょう。


2.サブリース方式
サブリース方式とは、個人所有の賃貸不動産を法人が一括して借り上げる方式です。
法人は管理委託方式と同様に賃貸不動産の管理業務を行いますが、合わせて法人が空室のリスクを負いますので、管理委託方式よりも少し高めの管理収入を受け取ることができるといわれています。
こちらも業務実態によりますが、判例等を参考にすると概ね家賃収入の20%程度の管理収入であれば認められるという見解が多いようです。
サブリース方式においても個人から法人へ不動産の移転は行わないことから比較的簡単に仕組みを作ることができますが、注意していただきたいのは、入居者との賃貸借契約を新たに法人との賃貸借契約に締結し直す必要がある点です。これをしないと形式だけのサブリースであるとして税務上否認されるリスクが高まるので注意してください。


3.不動産保有方式
 不動産保有方式とは、個人所有の賃貸不動産を法人へ売却し、法人が不動産を保有する方式です。一般的には土地はそのままで建物だけを法人へ売却します。
不動産保有方式によれば、不動産賃料収入はすべて法人へ移転されるため、個人所得税の節税効果、及び相続財産が増えていかないという点での相続税節税効果が最も高い方式であるといえます。
ただし下記に掲げるような注意点があります。


(1)移転費用がかかる
不動産取得税・登録免許税等の実費が評価額によっては数百万円規模でかかってきます。これらはそもそも不動産を移転しなければかからない費用なので、長期的にメリットがあるとわかっていても心情的に実行を躊躇される方が多いようです。


(2)物件に借入金が残っている場合移転は難しい
物件に金融機関からの借入金が残っていますとその物件を法人へ移転することは難しい場合が多いようです。


(3)建物の売買価格(時価)の設定
建物売却金額は時価が原則ですが、賃貸不動産の場合は適正に減価償却がされていれば、税務上の帳簿価格=時価として、税務上の帳簿価格で移転するのが一般的です。


(4)売却後の地代の設定
 法人へ建物を売却後、個人は保有し続ける土地を法人へ貸すことになります。この場合の地代については、「無償返還の届け出」をして地代を自由に(無償~相当の地代程度までの間で)設定する、もしくは相当の地代方式で地代を受け取る、のいずれかの方法をそれぞれのメリット・デメリットを比較して決定します。


(5)役員・出資者の構成、役員への給与設定
相続税対策で行うのか、所得税対策で行うのか、何を中心とした目的で行うのかにより、メリット・デメリットを比較して決定します。


Ⅴ.さいごに
法人化による不動産移転の効果を正確にシミュレーションするのは非常に難しいです。理由は、法人税・所得税・相続税の節税効果、そして社会保険料などの税金以外の要因まで考えると、こちらは得しても別の部分では損をするかもしれない、短期的にはメリットが出ても長期的にはメリットが薄れる、またはその逆のケースも考えられるといったような非常に難しいシミュレーションとなってしまうからです。
またリスク面の問題としては、節税効果を高めようと管理料を高く設定し、または親族給与を高く設定すると、それだけ税務リスクが高くなりますので、どこまでメリットを取ってリスクを許容するかという悩ましい問題も出てきます。判例で否認された事例はいくつも公表されておりますが、それぞれ個別事情を加味しての判例ですので、各個別事案においてどこまでが大丈夫でどこからがダメという線引き判断をすることが非常に難しいといえます。よって不動産賃貸業の法人化は安易に行わずスキームをしっかりと検討すべきでしょう。



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