はずれ馬券は経費か否か?

1.事件の概要
昨年、馬券で稼いだ所得を申告しなかった会社員男性が多額の課税処分を受け、所得税法違反に問われているというインパクトの強いニュースがありました。この男性は馬券で稼いだ所得約30億1,000万円の払戻金(購入金額は約28億7,000万円)を申告せず、5億7,000万円あまりを脱税したとし、所得税法違反に問われておりましたが、その後検察側は懲役1年を求刑しました。
検察側は「馬の勝ち負けは1レースごと。外れ馬券は儲けの原資に当たらず、経費ではない。」と指摘。一方の弁護側は「外れ馬券も所得を生み出す原資。配当金は偶然に得られた一時所得ではない。外れ馬券も経費に認めるべきだ」と無罪を主張。弁護側は国税当局の課税処分の取り消しを求めるとともに、大阪地裁に民事訴訟を起こしたことも明らかにしました。

 
2.課税の根拠
(1)現行税制
現行税制では馬券の払戻金は一時所得とされています。
(所得税法34条抜粋)
・一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
・一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
(所得税法基本通達34-1抜粋)
次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する
・競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等


(2)雑所得の定義
  本件弁護側は、本件においては馬券の払戻金は一時所得に該当せず、雑所得に該当するという主張をしています。
(所得税法35条抜粋)
・雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
・雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。
 その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額


(3)一時所得か雑所得か?
本件の一番の論点は、馬券の払戻金による所得が「一時所得」に該当するのか「雑所得」に該当するのかという点でしょう。通達において馬券の払戻金による所得が一時所得であると例示されていても、通達はあくまでも指針であり法令ではありませんので、そのまま盲目的に通達を課税の根拠とすることは正しいことではありません。検討すべきは本件所得が「一時所得の定義に該当するのかどうか」という点、すなわち「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得」なのか否かという点です。
通達において、馬券の払戻金が一時所得であると例示されている理由は、そもそも競馬による所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」ではないという考え方が前提となっているからであって、本件に関してはその前提がそもそも適合しないということであれば、「馬券の払戻金が一時所得である」ということの前提も変わってくるのではないかと考えます。
 租税訴訟に詳しい山下清兵衛弁護士は「ネットで大量に馬券を買うというのは、競馬を一時所得とした国税庁通達が出された時代には想定されていなかった事態であり、現在の社会常識からははずれた課税処分では」と指摘されております。この意見について私もまさにその通りだと思います。社会は複雑に変化しており、税法が想定していない取引形態・行為・事象は次々と発生しているのではないでしょうか。


(4)私見とまとめ
私見では、本件に関する所得は営利を目的とする継続的行為から生じた所得であり、雑所得に該当する(外れ馬券も経費として認める余地あり)と考えますが、納税者が負けている同様の判決事例もあるため、本件判決がどちらを支持するのかはわかりません。
本件で私が注目しているのは「一時所得か」「雑所得か」という議論よりは、むしろ「実態的側面を軽視し、形式的側面を多分に重視して課税処分が出されないか」ということ、「実態をどこまで鑑みて課税処分が出されるか」ということです。
今後の判決がどうなるのか、興味深く見守りたいと思っています。




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