贈与における「著しく低い価額」

Ⅰ.事例

(前提条件)
・父と子がそれぞれ賃貸マンション(父所有マンションA、子所有マンションBとする)を保有している。
・マンションAの時価は3,000万円、マンションBの時価は2,600万円である。
・マンションA、Bの敷地部分・建物部分の時価の差額はともに20%以内であり、所得税法上の等価交換の要件を全て満たしている。
(注)「時価」の概念及び「時価」を何に基づいて算定するかについては本稿では割愛する。

(事例)
 父と子は所有マンションを交換した。
なお交換にあたって時価差額の金銭の授受は行わなかった。

(補足)
・父と子はお互い金銭の授受はしなくてよいとの確認はした(お互い等価であることを了承した)が、マンションの客観的な市場取引金額は算定ができ、それによれば時価の差額があることは明らかであった。
・父はマンションBを、子はマンションAをそれぞれ取得したいと考える理由がある一方、実際には高齢である父の相続財産が減少するので相続税対策にもなるという理由もないわけではなかった。


Ⅱ.税務上の取り扱い

1.所得税
所得税法上の等価交換制度を利用して確定申告をすれば、交換差金の授受がなければ譲渡所得税・住民税は課税されない。


2.贈与税
 (1)考え方
次の2通りの考え方が想定される。
(A説) 子は父へ2,600万円のマンションを渡し父から3,000万円のマンションをもらっている。よって子は父から差額400万円相当の利益を得ていると考えられるため、子へ400万円に対する贈与税が課税される。
(B説) 子は父から価値の高いものをもらっているが、著しい価値の差はないので贈与税は課税しなくて差し支えない

(2)課税の根拠
上記事例において贈与税が課税される根拠は相続税法7条の規定である。

(相続税法7条―贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
著しく低い価額の対価を得て財産の譲渡を受けた場合においては当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価との差額に相当する金額を、当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなす(一部省略)。

また、補足として国税庁タックスアンサーに次の説明が紹介されている。
著しく低い価額の対価であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定することになります。法人に対して譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合に、時価で譲渡があったものとみなされる「著しく低い価額の対価」の額の基準となる「資産の時価の2分の1に満たない金額」により判定するものではありません。
 また、時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。

   上記内容を要約すると次のとおりとなる。
  ・ 「著しく低い価額」の取引であれば贈与税が課税される。
  ・ 「著しく低い価額」の取引でなければ贈与税は課税されない。
  ・ 「著しく低い価額」であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定する。


(3)本案件の判断
    「著しく低い価額であるかどうかは個々の具体的事案に基づき判定する」との説明に基づくと
本案件については明確な結論を出すことはできないが、納税者側の立場に立って考えると、個人的には次の準備を行ったうえで贈与税は課税しなくて差し支えないという見解を取りたいと考えます。
   ・「時価」は異なるもののお互いが合意するに至った経済的合理性のある理由を考えておく
  ・「時価」の取り方は様々であるため、できる限り取引が等価に近くなる「時価」の算定根拠を前もって準備しておく








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