事業承継対策その4 ― 自社株評価減額対策

(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)


1.はじめに
自社株(未上場株式。以下自社株)の評価額は資本金の額とは直接関係がなく、また会社の時価純資産額ともかけ離れている場合もあります。実際に自社株の評価を行ってみると予想外に低額である場合がある一方、相当高額になっている場合もありますので、自社株の評価額がいくらなのかを知るにはまず株価評価の計算を行ってみなければなりません。計算した結果、自社株の評価額が高いため相続発生時・事業承継時において様々な問題が発生じそうな場合には、自社株の評価を引き下げることができないかどうか早い段階から対策を考えることが重要です。

そこで本稿では自社株の評価額を引き下げる方法を紹介します。
なお自社株の評価方法は前回のコラムを参考にしてください。



2.自社株評価減額対策


(1)基本的な考え方
自社株は相続税財産評価基本通達に基づいて評価されますが、評価の基礎となる算定要素は細かく定められています。
 自社株評価の引き下げを検討する場合、一般的な対策としてはこれらの算定要素の数値を引き下げることができないかをまず検討します。



(2)算定要素の引き下げ


○ 類似業種比準価額方式
 類似業種比準価額方式は、「配当」「利益」「純資産」の3要素を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)配当を引き下げる
(イ)利益を引き下げる
(ウ)純資産を引き下げる
ことを検討します。


○ 純資産価額方式
純資産価額方式は、会社の時価純資産を基にして評価されます。
よって評価を引き下げるには、
(ア)時価純資産を引き下げる
ことを検討します。



(3)評価引き下げ対策-具体例
(2)の考え方を基にして株価評価を引き下げる可能性がある対策を紹介します。


配当をやめる(もしくは配当率を下げる)
 配当を引き下げれば配当要素は引き下がります。しかし一方で会社の内部留保は高まるため純資産価値が高くなります。そこで株主=役員の会社においては、配当は出さずにできる限り役員報酬として支給する(内部留保を下げる)ように考えます。


役員報酬を増額する
 合理的な基準により役員報酬を引き上げれば会社の利益は下がり、株価評価が下がることが想定されます。


役員退職金を支給・準備する
 役員退職金の財源を準備しておき、役員退任時に役員退職金を支給します。すると役員退職金という大きな損金が計上されますので、役員退職金の支給により株価評価が下がることが想定されます。
役員退職金は税効果・株価対策という点だけでなく、役員(遺族)の生活資金・納税資金としても必要ですので、非常に有効かつ重要な対策だと考えます。


高収益部門を切り離すなどの組織再編を行う
 会社分割・営業譲渡・株式交換等の組織再編を行うことにより株価評価が下がる場合があります。特に高収益部門を切り離せば株価評価が下がることが期待できます。
 しかし他の対策にも共通して言えることですが、組織再編の場合は特に対策を見誤ると、逆に株価が上昇してしまったり、行った対策が経営上マイナスに働いてしまうこともありえますので、事前に綿密な検討・準備・シミュレーションが必要です。


含み損のある資産を売却・処分する
 含み損のある資産を売却すれば損失が実現しますので、株価評価が下がることが想定されます。


不良債権・不良在庫の処分
 上記と同様に不良債権・不良在庫を処分すれば損失が実現しますので、金額によっては株価評価が下がることが想定されます。


損金性の高い保険の活用
 損金性の高い保険を活用すれば株価対策として有効です。しかし損金性が高くかつ貯蓄性も高い保険については、最近特に税務リスクが高まっていますので充分注意すべきです。


借入金による賃貸不動産の取得
 借入金で賃貸不動産を取得すれば、借入金は額面評価、取得不動産は路線価・固定資産税評価額等で評価(ただし取得後3年間は時価で評価)されることになり、取得前よりも全体の時価純資産額が下がり、株価評価が下がることが想定されます。




(4)移転方法

相続対策・事業承継対策としては、自社株評価を引き下げた後、贈与・譲渡等の方法で株式を後継者・役員・持ち株会等へ移転します。
なお対策は株価評価の引き下げだけでなく、スムーズな相続対策・事業承継対策を進めるために、移転スケジュールまで並行して検討すべきです。


3.さいごに
 以上株価評価を引き下げる可能性のある対策を検討しましたが、対策は「株価対策」という一方向のみで考えるのではなく、多方面からよりよい方法を考えるべきです。
合理的な理由が伴っていない対策は税務上否認されるリスクを伴いますし、相続対策としては有効であっても相続対策効果以上に他の税金が上昇したり、行った対策が事業戦略上マイナスに働いては対策を行う意味がないと思います。
まずは綿密な検討を行い、経営上プラスに働くような対策であれば積極的に実行していただきたいと思います。







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