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種類株式を使った事業承継対策~平成19年度税制改正より
(新日本法規出版社-「e-hoki」、中小基盤整備機構が運営する情報ポータルサイト「J-NET21」内にて連載中)
1.はじめに
事業承継は企業を継続させていくために非常に重要なテーマですが、諸問題が複雑に絡み合い対策を講じるまでに時間がかかるため、その実行までに困難を極めるケースが多いようです。
そもそも何から手をつければよいかわからないとお悩みの社長が多いのが実状ですが事業承継問題を検討しますと、大きく分けて次の2つの問題に集約されます。
① 後継者を決定し育成する問題(人的な承継問題)
② 経営権(株式)をスムーズに引き継ぐ問題(物的な承継問題)
①の「人的な承継問題」については、社長以下経営陣の課題である部分が大きいのですが、
②の「物的な承継問題」については、外部専門家と連携して少しでも早くできることから対策を講じていくべきだと思います(特に、既に後継者が決まっている場合)。
そこで本稿では事業承継問題のうち、
② 経営権(株式)をスムーズに引き継ぐ問題(物的な承継問題)
に着目し、数回にわたって対策を検討します。
2.種類株式を使った事業承継対策
昨年施行された新会社法の中で「種類株式」という株式の取扱が定められています(会社法108条)。
「種類株式」とは株式の種類ごとに権利内容が異なる株式の総称です。
「種類株式」は事業承継の面からもその活用が期待されていますが、これまでは税法の取扱が不明確であったため実務上活用が進んでいませんでした。
しかし今回平成19年度税制改正で「種類株式」の税務上の取扱が一部明らかになりましたので、実際に「種類株式」を使って事業承継を進める企業が増えてくるものと思われます。
3.種類株式の評価
「種類株式」のうち評価が明らかになったのは次の3類型です。
詳細な評価方法については、下記の国税庁のHPを参照してください。
(http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/5494/index.htm)
(1)配当優先・無議決権株式の評価方法
① 株式の特徴
○ 他の株式に優先して配当を受けることができる(配当優先株式)
○ 議決権なし(無議決権株式)
② 株式の評価方法
(ア)配当優先株式の評価方法
配当の異なる株式ごとに評価する(配当以外の要素については普通株式と同様に評価する)
(イ)無議決権株式の評価方法
○ 原則・・・普通株式と同じ評価
○ 特例・・・一定の条件を満たした場合、議決権がないことを考慮し、評価を5%減額することができる。ただしこの場合、無議決権株式以外の株式(普通株式)の評価にその減額分を加算する。
つまり、原則として全体の株式評価額は変わらないことが前提となります。
(2)社債類似株式の評価方法
① 株式の特徴
○ 配当は優先される
○ 残余財産の分配は制限される
○ 一定の期日に発行価額で償還される
○ 議決権なし
○ 他の株式を対価とする取得請求権を有しない(株式を取得する権利がない)
② 株式の評価方法
社債として評価される
この場合、社債類似株式は社債に準じて発行価額で評価されることになります。
「普通株式」を取得した相続人は(一般的に高額となる)株式評価、「社債類似株式」を取得した相続人は(一般的に低額となる)社債評価となり、相続人間における遺産分割の評価上の公平感、及び遺留分の問題等が解決されないことから、事業承継という観点において社債類似株式がどこまで有効に使えるのかは、筆者の意見としては疑問を感じます。
(3)拒否権付き株式
① 株式の特徴
一定の決議事項について拒否権を有する
② 株式の評価方法
普通株式と同じ評価
4.考察
今回明らかになった「種類株式」の評価方法は、次のスタンスをとっています。
○ 原則として「種類株式」も「普通株式」と同じ評価をするが、「種類株式」の特殊性から一定の要件を満たす場合には株式間の評価の調整(加減算)を認める
○ 「種類株式」を用いて株式全体の評価が下がることは意図されていない(税務上のメリットはあまり期待できない)
「種類株式」を使った事業承継対策は、スムーズな経営権の移転を行うという点においては有効ですが、改正の趣旨からすると相続財産の評価を減額する税効果については過度に期待しないほうがよいようです。
5.さいごに
次回は「種類株式」を使った具体的な事業承継対策を検討します。
今回中小企業の事業承継において特に活用が期待される「種類株式」の3形態に関して評価が明らかとなり、今後実際に「種類株式」の活用が進んでいくものと思われます。
しかし会社法では少なくとも9形態の「種類株式」が定められていますので、税務においても形態別の種類株式の評価方法は早急に明記されるべきであると思います。
税務の取扱が不明確だからなかなか種類株式が使えない、ということはあってはならないことだと思いますが、いかがでしょうか。


