E-hoki(新日本法規出版)WEB原稿
欠損金の繰り戻し還付制度の注意点
(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)
Ⅰ.はじめに
欠損金の繰り戻し還付制度はこれまでも制度としては存在していましたが、平成4年以降一部の場合を除き、その適用は停止されていました。しかし昨今の不況を反映して、欠損金の繰り戻し還付制度が復活することとなりました。
これにより前期は黒字であり法人税を支払っていた中小企業が当期において赤字に転落した場合、前期において支払った法人税の還付を受けることが可能となりました。
Ⅱ.欠損金の繰り戻し還付制度の内容
青色申告書を提出している内国法人(今回の改正により資本金1億円以下の中小企業者等が適用対象に加えられました)は、申告書の提出と同時に納税地の所轄税務署長に対し、平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において発生した欠損金額に対して、下記の算式で計算した金額に相当する法人税の還付を請求することができます。
○ 還付請求法人税額
=還付所得事業年度(欠損金額が生じた事業年度の前事業年度)の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額/還付所得事業年度の所得金額)
(注)欠損事業年度の欠損金額は、還付所得事業年度の所得金額を限度とします。
簡単に言えば、
「前期は黒字であり法人税を支払っていた中小企業が当期において赤字に転落した場合、前期において支払った法人税(の一部)の還付を受けることができる」ということです。
Ⅲ.地方税(住民税・事業税)の取り扱い
上記の欠損金の繰り戻し還付制度は法人税に関してのみであり、地方税において還付は認められていません。
ただし還付を受けることはできませんが、申告書上において必要事項を記入することにより、当期に発生した欠損金額を翌年以降へ繰り越すことができます。
Ⅳ.税務調査の可能性
税務署長は、還付請求書の提出があつた場合には、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する(法80条6)。
条文上は調査が行われるように記載されていますが、必ずしも税務職員が会社へ訪問する形の実地による税務調査が行われるわけではありません。
ただし実地による税務調査が行われることも多く想定されるため、繰り戻し還付を行う場合は、税務調査のことも念頭においたほうがよいでしょう。
Ⅴ.「繰り戻し還付」と「繰越控除」
1.「繰り戻し還付」と「繰越控除」制度の違い
税務上において赤字(欠損金)が発生した場合、「繰り戻し還付」と「繰越控除」の二つの制度があり、青色申告法人はどちらかを選択することができます。制度の違いを簡単にまとめると次のようになります。
(1)「繰り戻し還付」
○ 前年に支払った法人税を還付請求します(住民税、事業税は還付できず、翌年以降7年間マイナス分を繰り越します)
○ 税務署において詳細にチェックがなされます(場合によっては税務調査があります)
(2)「繰越控除」
○ 還付を受けることはできません(法人税、住民税、事業税ともに翌年以降7年間マイナス分を繰り越します)
○ 7年経過後においてマイナスが解消されなければ、そのマイナスは切り捨てられることになります
2.「繰り戻し還付」と「繰越控除」選択のポイント
前期は黒字であり法人税を支払っていた中小企業者等が当期において赤字に転落した場合、これまではマイナス分を将来の所得と相殺するために「繰越控除」をするしか方法がありませんでしたが、今後は「繰越控除」をするか「繰り戻し還付」を受けるかの判断が必要になります。判断が必要な場合は、例えば次のような点を考慮して判断していただきたいと思います。
○中長期的に利益が出そうにない場合・・・
「繰り戻し還付」を受けたほうがよいでしょう。
特に長期(7年以上)において黒字化が見込めないようであれば、今後マイナス分を取り戻す機会がなくなるため、当期において「繰り戻し還付」を受けるべきでしょう。
○少しでも当面の資金繰りをよくしたい場合・・・
「繰り戻し還付」を受けたほうがよいでしょう。
還付を受けることができれば資金繰りが改善されるため、「繰り戻し還付」を受けるメリットは大きいと思われます。資金繰りが厳しい企業はまず手元資金及び当面の資金繰りを優先して考えるべきでしょう。
○上記以外・・・
還付金額を計算し、一方で税務調査の可能性のことも踏まえて、両方の制度を比較・検討して決めてください。
3.補足
前提条件が同じであれば、長い目で見ると「繰越控除」「繰り戻し還付」ともに大きな違いはない(今期還付を受けるか、将来の税金を減らすかの違い)ですが、早い段階で還付を受けることができるのは制度としては魅力がありますし、経営者としても早期に還付を受けたいと考えるのが普通だと思います。しかし税務調査の可能性が高くなることに過剰に反応してしまう「税務署嫌い」の経営者の方が多いのも事実です。
両制度のメリット・デメリットを理解して、どちらを選ぶか検討していただきたいと思います。
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新しい土地税制 平成21年度税制改正
(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)
1.はじめに
世界経済の悪化に伴い日本経済は未曾有の経済危機に瀕していることから、平成21年度の税制改正は、消費の促進・景気の回復を最優先課題として例年にない大規模な減税改正となっています。
そこで本稿では、平成21年度税制改正のうち大きく変わった2つの新しい土地税制について解説します。
Ⅱ.新しい土地税制
1.土地を譲渡した場合の1,000万円特別控除制度の創設 (減税情報)
(1)内容
個人または法人が、平成21年または22年に、土地等を取得して保有し続け、所有期間が5年を超えた後にその土地等を譲渡した場合には、譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができます。
(2)補足注意点
この制度には様々な制限・注意点がありますので、そのポイントを列挙します。
○対象者はすべての個人、法人
○対象土地は国内にある土地・土地の上に存する権利のみ(建物は不可、棚卸資産である土地は不可、住居用土地でも可能だが買換特例などの特例譲渡との併用は不可)
○取得価額の制限はなし
○取得相手先は、親族等の特殊関係者である場合は不可
○所有期間は、譲渡年の1月1日時点において5年超でなければならない
○譲渡相手先は制限なし(親族でも可。ただし適正な時価譲渡でないとリスクあり)
○譲渡価額の制限はなし
○買換特例などの特例譲渡との併用は不可
○取得年の確定申告において取得土地についての明細記入・添付資料が必要
○特別控除は譲渡益を限度とする
○譲渡損失は切り捨てられる(譲渡損失の場合は優遇なし)
2.土地を先行取得した場合の課税の繰延べ制度の創設 (減税情報)
(1)内容
個人事業者または法人が、平成21年または22年に土地等を取得し、その取得日を含む事業年度終了後10年以内に、既に保有している他の事業用土地等を譲渡した場合には、譲渡益の80%(22年取得のみの場合は60%)相当額の課税を繰延べることができます。
(2)補足注意点
○対象者は個人事業者(事業所得、不動産所得、山林所得のある者)、法人
○対象土地は国内にある土地・土地の上に存する権利のみ(建物は不可、棚卸資産である土地は不可。個人の場合は事業用土地(注)のみ可)
(注)事業用土地・・・「貸付用土地」の場合、事業的規模でなくても、事業に準ずるもの(相当の対価を得て継続的に行うもの)であれば適用可能。ただし、この制度を受けるために一時的に貸付けを行ったと認められるケースなどについては「事業に準ずる」とは認められず、適用できない。
○取得価額の制限はなし
○取得相手先は、親族等の特殊関係者である場合は不可
○譲渡期間は、事業年度終了後10年以内
○譲渡相手先は制限なし(親族でも可。ただし適正な時価譲渡でないとリスクあり)
○譲渡価額の制限はなし
○買換特例などの特例譲渡との併用は不可
○取得年の確定申告において適用を受ける旨の届出書を提出
○課税の繰延べは先行取得資産の取得価額を限度とする
Ⅲ.想定される適用対象者
次のような方については、上記の新税制を検討する余地があると思われます。
○ 売却したい事業用(賃貸用)不動産があるが、売却すると税金が大きくかかるため売却できずにいる方
○近いうちに事業用(賃貸用)不動産を売却しようと考えている方
○近いうちに不動産を購入しようと考えている方
Ⅳ.さいごに
いずれの新税制も土地需要を喚起するために、まず土地を購入することを促進しています。
税制ありきで土地の購入を行うことは非現実的ですが、相続対策などで不動産の購入・売却を検討する方など、新税制によってメリットを享受できそうな方については充分検討できる制度だと思われます。
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役員給与の減額改定
(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)
1.はじめに
世界的な経済の減速・景気の悪化に伴って多くの企業の業績は悪化し続けており、上場企業をはじめとして中小企業においても役員給与を減額する会社が続出しています。
役員給与は本来毎月定額で支給しなければならず、期の途中で金額を改定した場合には、改定前後における差額に相当する金額は法人税法上経費として認められない、というのが原則でした。
しかしその一方で業績が著しく悪化した場合など一定の要件・基準を満たしている場合においては、期の途中で金額改定を認めるという取り扱いになっています。ただしその要件・基準は明確でない部分も多く、また税務調査において役員給与は厳格にチェックされるケースも多かったことから、実務上において役員給与を期の途中で改定して問題がないかどうか判断に迷うケースが多々ありました。
そこで判断基準をより明確にするために、役員給与を改定できる場合の基準が国税庁から公表されましたので紹介します。
2.役員給与の規定
(原則)
役員給与はその事業年度を通して定期同額でなくてはならず、期の途中で役員給与の金額を改定すると、改定前後の差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められません。
ただし次の場合においては期の途中での役員給与の改定が認められています。
(期の途中での改定が認められる場合)
(1)通常改定事由
事業年度開始の日から3ヶ月以内の給与の改定
(2)臨時改定事由
役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更に基づく給与の改定
(3)業績悪化改定事由
経営状況が著しく悪化したことその他これに類するやむを得ない事情による給与の改定
3.今回公表された「業績悪化改定事由」の例示
「業績悪化改定事由」について、判断基準として次の具体例が示されました。
(1)株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
(2)取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
(3)業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
(4)上記以外の事例であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられる。ただしこの場合、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要がある。
上記の場合に該当すれば期の途中で役員給与を減額しても、減額前給与・減額後給与ともに法人税法上経費として認められます。
逆に上記の場合に該当しない改定については、役員給与の額のうち減額前後における差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められなくなり、課税所得が増えることになります。
4.実務上のポイント
実務上、最も重要なポイントは上記(4)であると考えます。
顧問税理士によって見解が変わってくるものと思われますが、私見では
○ 減額理由をきちんと説明できること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を説明しうる客観的な根拠資料が準備できれば、役員給与の減額は多くの場合において認められるものと考えます。
特に最近数ヶ月において業績悪化に伴い、期の途中で役員給与を下げたいという相談が多発していますが、私見では、再建計画を立てることができるのであれば積極的に期中減額を行って経営を立て直すべきであると考えます。
経営者の目線から最重要として考えることは「税法」のことではなく「経営」のことです。税理士の目線から「税法」を遵守することは当然のことなのですが、期中改定の判断が付きづらい場合においても、現在の景気情勢において会社を生き延びさせるためには経営上の判断を最優先し、会社も、税理士も、そしてもちろん税務行政も、柔軟に対応すべきであると考えます。
いずれにせよ国税庁が業績悪化事由について柔軟な姿勢を示していることは間違いありません。
最終的には顧問税理士と相談をして判断していただきたいと思いますが、役員給与を期の途中で減額する場合には、
○ 減額理由をきちんと説明すること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を客観的に説明できるように万全の準備をしてください。
役員給与の改定に関する相談は
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