E-hoki(新日本法規出版)WEB原稿

相続対策は見直しを‐小規模宅地の評価減特例の注意点‐

1.はじめに
税法は毎年変わります。有効であったはずの相続対策も税制改正の結果効力がなくなり、相続対策を見直さなければならなくなることがよくあります。
昨年平成22年は相続税に関する「小規模宅地の評価減特例制度」が改正され、既に相続対策を行ってきた多くの不動産オーナーにとって、相続対策を再考する必要がでてきているようです。


2.小規模宅地の評価減特例
(1)小規模宅地の評価減特例とは
小規模宅地の評価減特例とは、相続人が、被相続人の居住用宅地や事業用宅地を取得し、その土地について居住や事業を継続し、さらに保有の継続など一定の要件を満たした場合、その土地の評価額のうち一定割合を減額することができる相続税に関する特例制度です。
この特例制度の要件を満たせば相続した土地の評価額は大きく減額され、相続税対策としては非常に効果のある制度です。

(2)減額割合
改正後現在の評価減額割合は次の通りです。
○ 居住用宅地・・・240平方メートルまで80%減額(=20%評価)
○ 事業用宅地・・・400平方メートルまで80%減額(=20%評価)
○ 貸付用宅地・・・200平方メートルまで50%減額(=50%評価)

(3)改正点
昨年平成22年の改正により小規模宅地の評価減特例の適用要件が次のように厳しくなりました。
○ 居住・事業の継続要件が厳しくなった。
○ 取得者ごとの判定要件が厳密になった。
具体例を挙げて見てみます。


3.注意すべき事例
下記のケースは、改正の影響を受けているものと思われます。
既に下記のケースに該当している方や、下記のケースのような遺産分割を想定している方は、相続対策を見直すことを検討したほうがよいでしょう。

(1)賃貸併用住宅に居住しているケース
(例):被相続人が一棟マンションの一部に居住し、他の部分を賃貸しているケース
改正前・・・全体が80%減額
改正後・・・居住部分80%減額
      賃貸部分50%減額

従前は、被相続人が一部に居住していれば、その生活の基盤たる居宅を保護するという観点から、賃貸部分を含めて全体を80%評価減額することができました。
改正後は要件が厳しくなり、居住部分については要件を満たせば80%評価減額することができますが、賃貸部分については80%評価減額がなくなり、賃貸としての要件を満たせば50%、満たさない場合は評価減額がなくなります。

(2)自宅を共有持ち分にするケース
(例):「配偶者」と「同居しない子」が被相続人の自宅を共有で取得するケース
従前は、配偶者が取得すれば全体を80%評価減額することができました。
改正後は相続人ごとに要件を判定するため、配偶者が取得した部分は80%評価減額することができますが、同居しない子が取得した部分は評価減額がなくなります。

(3)居住(または事業)を継続しないケース
(例):配偶者以外の相続人が被相続人の自宅を取得し、その後居住しないなど居住継続要件を満たさないケース
従前は、居住を継続しなくても他の一定の要件を満たしていれば、80%評価減額ではないものの、50%評価減額することができました。
改正後は居住継続要件が厳しくなりましたので、評価減額がなくなります。


4.相続対策の再検討
 相続対策を検討する際にまずすべきことは、現状の把握です。
どのぐらい相続税がかかるのかを想定するためにも、土地の評価だけではなくまずは概算でよいので全ての財産の評価を算定したほうがよいでしょう。
具体的には、必要に応じて専門家に相談しながら、次のように進めていくとよいでしょう。

ステップ1:資料の収集(路線価、固定資産税評価、有価証券、保険証券、預貯金の概
算など)
ステップ2:財産評価及び税額の試算
ステップ3:各種相続税対策の検討
ステップ4:対策の効果をシミュレーション
ステップ5:実行
ステップ6:定期的に検証・見直し





相続対策に関する相談は


名古屋市中区の橋本税理士事務所へ





052-962-4139

又は

 こちらのフォームからお願いします






個人事業の法人化その3

Ⅴ.法人化のメリット・デメリット
法人化を検討する場合、税金面だけではなく多方面から検討をすべきである。そこで税金面に限らず、法人化のメリット・デメリットをまとめてみた。

1.法人化のメリット

□ 社長本人へ給与を支給することにより、所得税の節税が期待できる
前々回のコラム参照

□ 家族従業員へ給与を支給することにより、所得の分散(節税)が期待できる
   前々回のコラム参照

□ 経費に計上できるものが増える
  社宅家賃・出張旅費日当・福利厚生費支出など、個人事業なら認められない(もしくは制限される)が法人であれば経費として認められるものがある。ただしいずれも無条件で経費として認められるものではなく、その支出に関する規程・条件が整備されていること、規程に基づいて経費の実態が伴っていること、など条件を満たす必要がある。

□ 役員へ退職金を支給することができる
  個人でも小規模共済などによる退職金準備は可能であるが、法人のほうがより高額に退職金を準備しやすく、選択肢の幅が広がると言える。

□ 資本金が1千万円未満の場合、消費税が2期免税となる
  個人事業を法人化した場合においても、設立した新設法人の資本金が1千万円未満であれば、設立後の2事業年度においては消費税の納税義務がないため、大きな税務メリットが期待できる。

□ 法人のほうが個人事業に比べ信用力があるとみられる
  一般的に法人のほうが個人事業に比べ信用力があるとみられるようであり、取引先が大手もしくは保守的な業界であるほどその傾向が強い。また信用力とも関係するが、資金調達についても法人のほうが借入をしやすいようである。
   
□ 優秀な人材が集まりやすい、既存従業員のモチベーションもアップする
  社員の立場からしても社会保険が完備された法人のほうが安心であり、優秀な人材を集めやすいと言われる。

2.法人化のデメリット

■ 法人設立費用がかかる
 登記費用など設立費用がかかる。また司法書士等に依頼する場合は別途費用が必要になる。

■ 赤字でも毎年約7万円の税金がかかる
 法人は資本金の額に応じて毎年最低約7万円の税金(法人県民税・市民税均等割り)を払わなければならない。

■ 税務申告費用がかかる
 個人事業の税務申告に比べ法人の税務申告は複雑になる。また個人事業の法人化の場合は事前に検討すべき事項が多く、さらに事業が発展していくにつれて各種相談事が増えることを考えると、費用はかかるが法人化を機に税理士へ依頼することが望ましい。

■ 社会保険の負担が非常に重い
  社会保険に加入すれば将来もらえる年金は増えるため将来の保障という点ではメリットだが、毎月支払う社会保険料の負担は重くなるという点ではデメリットである。特に社会保険を負担しているという気持ちが強い中小企業の経営者の目線からすると、社会保険の負担は非常に重く感じるようである(なお実際は、法人を設立しても社会保険に加入していない会社がたくさんある)。

■ 個人資金と法人資金は明確に区分すべき
  個人事業では「個人資金」も「事業資金」も個人事業主のものであることから明確に区分されていない場合もよくみられる。しかし法人化すると「個人」と「法人」は別人格であるから、「個人資金」と「法人資金」は明確に区分すべきである。
例えば小規模事業、特に役員が1人の会社であれば、役員(=社長)が「法人資金」を勝手に使うことができてしまうが、経営上・税務上は問題があるので、「法人資金」と「個人資金」は明確に区分し、社長個人が「法人資金」を私的に使用すべきではない。


Ⅵ.法人設立後の諸手続き・シミュレーション
個人事業を法人化する場合、設立前後において検討すべき事項は多い。
具体的には各々のケースによって異なるが、一般的には下記の事項を中心としてしっかりと事前に検討すべきである。

□ 法人設立時期・決算時期の検討
消費税の2期免税メリットを考慮に入れながら自社にとって最も適した設立・決算時期を検討
する。
□ 法人事業開始に関する諸届の提出
特に青色申告承認申請書は提出期限があるので注意を要する。
□ 法人への財産債務の引継ぎ方法の検討
法人で使用し続ける資産(不動産・備品設備など)を法人へ売却するか賃貸するかの検討、
売却金額・賃貸金額の検討などを行う。
□ 役員給与の設定
役員の給与は原則として期中において変更できないため、事前に利益計画を立てて役員給
与を設定すべきである。
□ 社会保険への加入手続き
□ 就業規則、給与規程、退職金規程(役員退職金規程を含む)の整備
□ その他諸規程の整備
出張旅費規程、借上社宅規程など、規程を整備することにより税務上メリットを受けることがで
きるものがある。
□ 個人事業の閉鎖手続き
消費税の届出手続き、閉鎖年の確定申告、事業税の申告など失念しやすいものもあるので注意を要する。





個人事業の法人化・法人設立に関する相談は


名古屋市中区の橋本税理士事務所へ





052-962-4139

又は

 こちらのフォームからお願いします






個人事業の法人化その2

(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)


前回に引き続き、個人事業の法人化を検討する。


Ⅳ.シミュレーション例 
「個人事業」と「法人」で税金がどのぐらい異なるか、次の前提条件によりシミュレーションをしてみた。

(前提条件)
・事業の利益は専従者給与支給前、65万円青色申告特別控除前のものとする
・事業主の所得控除は所得税・住民税ともに150万円とする
・専従者の所得控除は所得税・住民税ともに38万円とする
・専従者給与は300万円とする
・事業税の税率は5%、事業税控除は290万円とする


シミュレーション1. 事業の利益が800万円の場合

(1)個人事業の場合の税金

(イ) 事業主の税金
所得税=800万円-300万円-65万円-150万円=285万円×10%-97,500円=187,500円
住民税=285万円×10%=285,000円
事業税=(800万円-300万円-290万円)×5%=105,000円
事業主の税金合計=577,500円

(ロ) 専従者(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者の税金合計=231,000円

個人事業の場合の税金合計(イ)+(ロ)
=577,500円+231,000円=808,500円


(2)法人の場合の税金
代表者の給与は400万円とする

(イ) 法人の税金
法人税 800万円-300万円-400万円=100万円×18%=180,000円
法人住民税・事業税=150,000円(概算)
法人の税金合計330,000円

(ロ) 代表者の税金
所得税=(400万円-134万円)-150万円=116万円×5%=58,000円
住民税=116万円×10%=116,000円
代表者の税金合計=174,000円

(ハ) 専従者役員(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者役員(妻・子)の税金合計=231,000円
法人の場合の税金合計(イ)+(ロ)+(ハ)
=330,000円+174,000円+231,000円=735,000円

(考察)
上記シミュレーションでは「個人事業」と「法人」の税金の差額は数万円であり、税金面での法人化のメリットはあまりないと思われる。


シミュレーション2. 事業の利益が1,200万円の場合

(1)個人事業の場合の税金

(イ) 事業主の税金
所得税=1,200万円-300万円-65万円-150万円=685万円×20%-427,500円=942,500円
住民税=685万円×10%=685,000円
事業税=(1,200万円-300万円-290万円)×5%=305,000円
事業主の税金合計=1,932,500円

(ロ) 専従者(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者の税金合計=231,000円
個人事業の場合の税金合計(イ)+(ロ)
=1,932,500円+231,000円=2,163,500円


(2)法人の場合の税金
代表者の給与は800万円とする

(イ) 法人の税金
法人税 1,200万円-300万円-800万円=100万円×18%=180,000円
法人住民税・事業税=150,000円(概算)
法人の税金合計330,000円

(ロ) 代表者の税金
所得税=(800万円-200万円)-150万円=450万円×20%-427,500=472,500円
住民税=450万円×10%=450,000円
代表者の税金合計=922,500円

(ハ) 専従者役員(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者役員(妻・子)の税金合計=231,000円
法人の場合の税金合計(イ)+(ロ)+(ハ)
=330,000円+922,500円+231,000円=1,483,500円


(考察)
上記シミュレーションでは「個人事業」と「法人」の税金の差額は60~70万程度あり、設定給与その他条件次第では法人化のメリットはあると思われる。


シミュレーション3. 事業の利益が1,600万円の場合
(1)個人事業の場合の税金

(イ) 事業主の税金
所得税=1,600万円-300万円-65万円-150万円=1,085万円×33%-1,536,000円=2,044,500円
住民税=1,085万円×10%=1,085,000円
事業税=(1,600万円-300万円-290万円)×5%=505,000円
事業主の税金合計=3,634,500円

(ロ) 専従者(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者の税金合計=231,000円
個人事業の場合の税金合計(イ)+(ロ)
=3,634,500円+231,000円=3,865,500円


(2)法人の場合の税金
代表者の給与は1,000万円とする

(イ) 法人の税金
法人税 1,600万円-300万円-1,000万円=300万円×18%=540,000円
法人住民税・事業税=310,000円(概算)
法人の税金合計850,000円

(ロ) 代表者の税金
所得税=(1,000円-220万円)-150万円=630万円×20%-427,500=832,500円
住民税=630万円×10%=630,000円
代表者の税金合計=1,462,500円

(ハ) 専従者役員(妻・子)の税金
所得税=(300万円-108万円)-38万円=154万円×5%=77,000円
住民税=154万円×10%=154,000円
専従者役員(妻・子)の税金合計=231,000円
法人の場合の税金合計(イ)+(ロ)+(ハ)
=850,000円+1,462,500円+231,000円=2,543,500円


(考察)
上記シミュレーションでは「個人事業」と「法人」の税金の差額は130~140万程度あり、設定給与その他条件次第では法人化のメリットは大きくあると思われる。





個人事業の法人化・法人設立に関する相談は


名古屋市中区の橋本税理士事務所へ





052-962-4139

又は

 こちらのフォームからお願いします





Copyright (C)2005. hashimoto . All Rights Reserved.