E-hoki(新日本法規出版)WEB原稿

タワーマンションを利用した相続税の節税規制へ

1.はじめに
11月3日各新聞の紙面には「タワーマンション課税強化」という次のような記事が並びました。
タワーマンションを使った相続税の節税をめぐり、国税庁が行きすぎた節税策がないかチェックを厳しくするよう全国の国税局に指示したことがわかった。国税庁が2013年までの3年間を調べると、評価額が約3,600万円の物件が約1億円で売られるなど、343件の平均で売値(時価)が評価額の3倍を超えていた。過去には、相続後すぐに売り抜けて多額の「差益」を得るケースもあり、こうした節税策を薦める金融機関や税理士法人があるという。「著しく不適当」なケースは個別に評価し直す、という通達の規定があり、全てのタワーマンションの相続について適用するかどうか検討する考えだ。(朝日新聞より)


2.タワーマンションを利用した節税スキーム
タワーマンションを利用した節税スキームは、タワーマンションの「時価(実際に売買される市場価額)」と「相続税評価額」との差額に着目した節税方法です。
相続税におけるマンションの評価は土地(敷地権)と建物(区分所有建物)に分けて行います。土地(敷地権)については「マンション敷地全体の評価額×その者の敷地権割合」で評価し、建物(区分所有建物)については「その者の所有する建物部分の固定資産税評価額」で評価します。
この評価額は、敷地の路線価や建物の固定資産税評価に基づいて計算されていますが、建物が高層階にあることによる価値は考慮されていません。そのため「相続税評価額」と「時価」との間に大きな差額が生じます。
そこでこの差額に着目し、タワーマンションを購入して相続税評価額を大きく下げる実例が最近特に目立ってきました。


3.今後の規制は?
財産評価基本通達6では「この通達の定め(=通常の評価方法)によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定し、行き過ぎた節税行為には歯止めをきかせることができるようになっています。
過去には、相続開始直前にタワーマンションを購入して大きく評価を引き下げ、相続開始直後に大きく評価額を上回る金額で売却したため、上記通達6を基に否認された事例も既に存在しています。
今回の報道によると、国税庁は「タワーマンションを利用した節税行為には財産評価基本通達6の規定に基づいて通常のマンションの評価方法ではなく別の方法で評価することも積極的に行っていきますよ」という姿勢を示したようです。
今後具体的な評価・規制方法が明示されるのかどうかは現時点ではわかっていませんが、私見としては平成8年に廃止された「相続開始前3年以内に取得した土地建物等は取得価額により評価する」という「取得価額課税」が復活してもおかしくないと思っています。


4.さいごに
私の周りでも安易に「タワーマンションを利用した節税スキーム」を薦める不動産業者、税理士が数多くいましたが、大きな節税対策には「税制改正リスク」が必ずついてくるということはしっかり認識しておくべきでしょう。
特に本件の節税スキームについては、タワーマンションを売却すれば「相続税評価額」と「時価」が大きくかい離していることが顕在化するため、売却することが税務否認につながりやすくなると考えられます。既に相続税対策としてタワーマンションを購入した方は、相続開始までに売却しない限り、相続税の否認リスクはついてまわると言わざるをえないでしょう。とりあえず相続税対策は成功したように思えたが、実際の相続時には否認されるのではないか、大きな不安は残ったままだ、そんな状況に陥る富裕層もいるのではないでしょうか。
相続税対策は「節税」することが大きな目的なのでしょうが、「安心すること」も大きな目的なのではないかと思います。
今後どのような規制がされるのか今後の動向に注目したいと思います。



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一時所得か?みなし贈与か?

1.はじめに
所得や利益が発生した時には通常何らかの課税が行われますが、実務ではどのような課税が行われるのかについて判断に迷う事例に時々遭遇します。
最近所得税が課税されるのか贈与税が課税されるのか判断に迷う次のような事例がありましたので紹介します。


2.事例
相談者は次のような「建物更生共済」に加入しており、満期を迎えたため子が満期保険金を受け取りました。どのような課税になるのでしょうか。
・契約者(保険料負担者)父
・保険金受取人 子
(注)「建物更生共済(以下建更)」とは、JAが販売している建物や家財を保障する損害保険契約で、払い込み期間が長ければ解約返戻金や満期時には満期金のある貯蓄性のある保険商品のことです。


3.最初の判断
当初このお話を聞いたとき、これは保険金受取人である子が、保険料負担者である父から贈与があったものとみなされ、贈与税が課税されると考えました。しかし相談者は、JAの担当者から一時所得が課税されるという説明を受けていたため、改めて内容を精査してみました。


4.課税関係
まず関係条文・施行令・通達を調べてみました。
「所得税法34条(一時所得)」
・一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう(一部省略)。
これだけでは建更が一時所得とは判断できませんので次に通達をみます。
「所得税法基本通達34-1(4)(一時所得の例示)」
・令第184条第4項に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等は一時所得に該当する(一部省略)。
令184条第4項の説明は省略しますが、本通達では「損害保険満期金(建更を含む)は一時所得に該当する」と説明しています。

次に相続税法を調べてみます。
「相続税法第5条(贈与により取得したものとみなす場合)」
・「障害を保険事故とする損害保険契約の返還金」のうち、当該保険金受取人(子)以外の者(父)が負担した保険料に対応する部分ついては、保険金受取人(子)が、保険料負担者(父)から贈与により取得したものとみなす(一部省略)。

「障害を保険事故とする損害保険満期金」は、相続税法5条で贈与税が課税されると規定され、他方では一時所得の通達において一時所得に該当すると例示されています。この場合通達より法律が優先されますので、「障害を保険事故とする損害保険満期金」は、贈与税が課税されることになります。
一方、「建更」は障害を保険事故としないため相続税法5条による贈与税の課税はないと判断され、一時所得の通達により一時所得と判断されるようです(参考までにJAのホームページでは、建更の満期金は、保険料負担者が誰であるかに関わらず一時所得になると説明されています)。


5.建更の疑問点
ここまでの結論では「建更」の満期金は相続税法5条のみなし贈与の規定がないため、所得税法基本通達の一時所得の例示により、一時所得と判断されているようです。ただし私見ではこの課税判断には疑問を感じる部分があります。


もう一度条文から離れて事実関係にもどってみます。

保険料は父が払っています。建更は返戻金があるため途中解約すれば父は解約返戻金を受け取ることができます。つまり、父は満期になるまでは建更の権利(財産権)を持っていると言えます。
そして父は保険料を払い続け満期を迎えました。満期時において父は建更の権利(財産権)を失い、子が満期金を受け取ります。
さて子が受け取った満期金は本当に一時所得なのでしょうか。父から子への財産の移転すなわち贈与とみなすという考え方はないのでしょうか。
これについては相続税法9条という考え方があります。相続税法9条は、利益の移転があった場合のみなし贈与の包括規定です。
本件に当てはめると、建更の権利という利益が父から子へ移っているので、相続税法5条の適用はなくても相続税法9条の規定により贈与税の課税があるという考え方も取れなくはないとも感じます。しかし通達とはいえ一時所得として例示されているものを一時所得と判断せず、包括的な規定である相続税法9条を持ち出して贈与税を課税するのも乱暴な判断であるとも感じます。


6.最後に
建更満期金は一時所得であるというのは現状では通説のようです。しかし新たな判例等が出れば通達の判断も変わっていきますし、本事例も課税上不自然と言わざるを得ない論点が内在していますので、今後内容を改めて検討したいと考えています。



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その所得は誰のものか?~実質所得者を考える~

1. はじめに
 先月次のような相談を受けました。
父が自宅に隣接した土地(現在未舗装の空き地)を持っています。隣人からその土地を駐車場として貸してほしいという依頼がいくつもあるため、特に設備を設置することもせずそのまま駐車場として貸そうかと考えています。しかし父は高齢かつ生活には困っていないので、娘である私が(例えばその土地を父から無償で借りたことにして)駐車場収入を得ることはできませんか?


2. 実質所得者課税
上記の質問は、実質所得者課税という考え方が関係してきます。


(実質所得者課税)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する(所得税法12条)。


(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する(所得税法基本通達12-1)。


3.本件への当てはめ
 解釈としては次の2つの考え方がありそうです。
(A説)土地から発生する駐車場収入は、土地所有者である父が取得すべきです。
(B説)土地から発生する駐車場収入は、土地を貸す事業(駐車場事業)を行っているのは娘なので、実際に駐車場経営を行っている娘が取得すべきです。


実質所得者課税の考え方を説明している所得税法12条関係は、「資産の所有者が単なる名義人」であることが大前提となっています。
言い換えると、「資産の所有者が単なる名義人」である場合は、土地から発生する駐車場収入は資産の所有者である父の所得ではなく、実際に駐車場経営を行っている娘が真実の権利者であるとして娘の所得とすることができそうです。
しかし不動産は登記され法的に権利が守られていますので、資産が不動産である場合は、「資産の所有者が単なる名義人」であるということは通常考えにくい解釈であると思います。
すると本件では、土地から発生する駐車場収入は土地の所有者である父の収入とすべきで、仮に娘が駐車場収入をもらったとしても、それは本来父がもらうべき駐車場収入を父からもらっているにすぎないと判断されることになると思います。


4.土地を貸しているのか、設備を課しているのか
では本件とは異なり、たとえば娘がその土地にアスファルトを敷いたりフェンスを作るなど費用をかけて駐車場事業を行う場合はどうでしょうか。
この場合は、娘が父から使用貸借で土地を借りて、娘が費用と労力をかけて自分の駐車場事業を行っていると判断できると思います。
言い換えると、土地の所有者は父ですが、その土地の上に存する駐車場設備の所有者は娘なので、駐車場設備から発生する駐車場収入は娘の所得としてよいのではないかと思います。


5.本件への対応
実際の本件の相談においては、そのまま土地を貸すのであれば実質所得者課税の考え方により父の所得とすべきではないかということ、娘さんの費用負担でアスファルト等最低限簡易な設備を整えて娘さんの管理責任において駐車場事業を行うのであれば、娘さんの所得にすることができるのではないかということをお伝えし、再度考えていただくこととなりました。


6.さいごに
なぜ実質所得者課税という規定があるのでしょうか。
実質所得者課税という規定がなければ、例えば地代家賃等不動産から発生する所得については親族間で自由に所得の付け替えができてしまうことが想定されます。
よってこのような租税回避行為を防止するために制定されているのではないでしょうか。



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