E-hoki(新日本法規出版)WEB原稿

役員給与の減額改定

(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)


1.はじめに

世界的な経済の減速・景気の悪化に伴って多くの企業の業績は悪化し続けており、上場企業をはじめとして中小企業においても役員給与を減額する会社が続出しています。


役員給与は本来毎月定額で支給しなければならず、期の途中で金額を改定した場合には、改定前後における差額に相当する金額は法人税法上経費として認められない、というのが原則でした。
しかしその一方で業績が著しく悪化した場合など一定の要件・基準を満たしている場合においては、期の途中で金額改定を認めるという取り扱いになっています。ただしその要件・基準は明確でない部分も多く、また税務調査において役員給与は厳格にチェックされるケースも多かったことから、実務上において役員給与を期の途中で改定して問題がないかどうか判断に迷うケースが多々ありました。
そこで判断基準をより明確にするために、役員給与を改定できる場合の基準が国税庁から公表されましたので紹介します。


2.役員給与の規定

(原則)
役員給与はその事業年度を通して定期同額でなくてはならず、期の途中で役員給与の金額を改定すると、改定前後の差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められません。
ただし次の場合においては期の途中での役員給与の改定が認められています。


(期の途中での改定が認められる場合)
(1)通常改定事由
事業年度開始の日から3ヶ月以内の給与の改定


(2)臨時改定事由
役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更に基づく給与の改定


(3)業績悪化改定事由
経営状況が著しく悪化したことその他これに類するやむを得ない事情による給与の改定

3.今回公表された「業績悪化改定事由」の例示

「業績悪化改定事由」について、判断基準として次の具体例が示されました。


(1)株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合


(2)取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合


(3)業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合


(4)上記以外の事例であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられる。ただしこの場合、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できるようにしておく必要がある。


上記の場合に該当すれば期の途中で役員給与を減額しても、減額前給与・減額後給与ともに法人税法上経費として認められます。
逆に上記の場合に該当しない改定については、役員給与の額のうち減額前後における差額に相当する金額については、法人税法上経費として認められなくなり、課税所得が増えることになります。


4.実務上のポイント

実務上、最も重要なポイントは上記(4)であると考えます。

顧問税理士によって見解が変わってくるものと思われますが、私見では
○ 減額理由をきちんと説明できること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を説明しうる客観的な根拠資料が準備できれば、役員給与の減額は多くの場合において認められるものと考えます。


特に最近数ヶ月において業績悪化に伴い、期の途中で役員給与を下げたいという相談が多発していますが、私見では、再建計画を立てることができるのであれば積極的に期中減額を行って経営を立て直すべきであると考えます。


経営者の目線から最重要として考えることは「税法」のことではなく「経営」のことです。税理士の目線から「税法」を遵守することは当然のことなのですが、期中改定の判断が付きづらい場合においても、現在の景気情勢において会社を生き延びさせるためには経営上の判断を最優先し、会社も、税理士も、そしてもちろん税務行政も、柔軟に対応すべきであると考えます。


いずれにせよ国税庁が業績悪化事由について柔軟な姿勢を示していることは間違いありません。
最終的には顧問税理士と相談をして判断していただきたいと思いますが、役員給与を期の途中で減額する場合には、
○ 減額理由をきちんと説明すること
○ 客観的な根拠資料を残すこと
さらに
○ 利益調整ではないこと
を客観的に説明できるように万全の準備をしてください。





役員給与の改定に関する相談は


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創業費・開業費を漏らさず計上しましょう

 事業を開始するにあたっては様々な費用が発生します。
これらの費用を正しく認識し、細大漏らさず会社の費用に計上して正しく節税を心がけましょう。


1.創業費・開業費を正しく計上する

 事業開始時に発生する費用は「創業費」と「開業費」に区分されます。


①創業費とは・・・
 法人を設立するために通常必要となる費用で主に下記のものが該当します。
○発起人報酬
○設立登記にかかる登録免許税、司法書士手数料
○定款認証手数料
○株式払込取扱手数料
○創立総会に関する費用
○その他設立に必要な費用で会社が負担すべき費用


②開業費とは・・・
 法人設立後、事業を開始するまでの間に特別に支出した費用で主に下記のものが該当します。
○広告宣伝費
○市場調査費
○接待交際費
○その他開業準備のために特別に支出する費用


 上記の区分で考えれば、事業開始前に発生した費用であっても、事務所賃借料・水道光熱費・借入金利子・給与などの「経常的に生じる費用」は創業費・開業費に該当しません。 

 
 ではこれらの事業開始前に発生した「経常的に生じる費用」は損金に計上できないのでしょうか?


 結論は設立第1期の損金に計上することが出来ます。
 法人設立前に支出した「経常的に生じる費用」は、設立第1期の事業年度の申告に含めて計算することができるという取り扱いが出ています(基通2-6-2参照)。
(ただし設立期間が長期にわたる場合の設立期間中の費用や、個人から事業を引き継いだ法人成りの場合の設立期間中の費用は設立第1期の申告に含めることはできません。)

 
 よって法人設立前に発生した「経常的に生じる費用」についても請求書・領収書等をきちんと保存し、その支出の内容がわかるようにしておきましょう。


2.創業費・開業費を損金化する
 
 創業費・開業費は支出した事業年度で全額損金とすることもできますし、5年以内に(未償却残高を限度として)任意に償却することもできます。


 設立当初は開業準備費用が嵩み、欠損(赤字)になる場合がよくあります。
このような場合は創業費・開業費は繰延資産として資産計上しておきましょう。
そして毎期の決算利益の状況を見ながら毎期の償却額を決めていきましょう。


3.まとめ
 
 ①開業費に該当し損金化できる費用なのか
 ②開業前費用として設立第1期の費用として損金化できる費用なのか
 ③開業前費用だが損金化できない費用なのか
は判断に迷うケースがあります。


 開業前後は特に行うべきことが多すぎて事務作業がおろそかになりがちですが、出来る限り支出の内容を明確にし、損金化できるものは会社の損金に計上して正しく節税を心がけましょう。


(注)説明不足、誤解を招く表現が含まれている場合が起こり得ます。質問がございましたら相談フォームよりご連絡ください。







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輸出免税に関する注意点

(新日本法規出版社-「e-hoki」、内にて連載中)



1.はじめに
前々回において輸入取引に関する消費税を取り上げましたが、今回は輸出取引に関する消費税法について取り上げます。


2.輸出免税の取り扱い
消費税は国内において事業者が行った資産の譲渡等に対し、課税が行われます。消費税法上は輸出取引も国内取引(国内において事業者が行った資産の譲渡等)の範囲に含まれますが、その商品・サービスが国外において消費されることから、一定の要件を満たした輸出取引に関しては消費税が免除されることとなっています(消費税法7条)。


3.輸出免税の対象となる取引に該当するかどうかの判定
下記の全てに該当した場合、その取引は輸出免税の対象となる取引に該当し、消費税は免除されたものとして取り扱われます。
(1)その取引が国内取引に該当するかどうか
(2)その取引が課税資産の譲渡等に該当するかどうか
(3)その取引が輸出取引等の範囲に該当するかどうか
(4)輸出取引等の証明があるかどうか


4.輸出免税の対象となる取引
 輸出免税の対象となる取引の具体例としては次のものが挙げられます(消費税法基本通達7-2-1)。
(1)本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付
(2)外国貨物の譲渡又は貸付
(3)国際輸送、国際通信、国際郵便等
(4)外国貨物の荷役、運送、保管等の役務提供
(5)非居住者に対する無形固定資産等の譲渡又は貸付
(6)非居住者に対する役務の提供で次に掲げるもの以外のもの
○ 国内に所在する資産に係る運送又は保管
○ 国内における飲食又は宿泊
○ その他国内において直接便益を享受するもの



5.実務の現場から 
例えば単に商品を海外へ輸出したような場合ですと輸出免税の判定は難しいものではありません。
 しかし海外取引は単に商品を輸出する場合だけではなく、様々な形をとり取引が複雑になってきており、それに伴い消費税の判定も複雑なケースが増えています。
そこで実務において過去に直面した取引の中から海外関係の消費税判定ポイントをいくつか掲げます。


例1:インターネットを介した海外取引 
(イ)国内において役務提供を行っていると判定されるケース
(ロ)国外において役務提供を行っていると判定されるケース
(ハ)国内外において役務提供を行っており、判定が難しいケース(どちらとも考えられるケース)
インターネット取引は国内にいながら同時に海外で事業を行うことができます。役務提供がどこで行われているかが判定ポイントとなりますが、ビジネスの形態によっては税法が追いついていない場合も想定されます。判断が難しい場合でも取引の事実関係を確認し、税務調査時に主張ができるようにしておくことが大切です。


例2:非居住者に対する役務提供
(イ)非居住者かどうかの判定
(ロ)役務提供地が国内か国外かの判定
非居住者に対する役務提供のうち国内において直接便益を享受しない場合は輸出免税に該当しますが、上記の判定に関し判断が難しいケースが想定されます。


例3:商社が介在している場合の輸出免税の判定
 輸出免税を受けるのは誰か、取引書面で事実関係を確認する必要があります。


例4:輸出証明書並びに準ずる書類の判断
 消費税法上輸出免税に該当する取引であっても、物品の輸出をしていないため輸出証明書がない場合も多くあります。この場合、相手方との契約書その他の書類で一定の事項を記載した書類の保存が義務付けられています。




6.輸出免税判定の重要性

 「輸出免税取引」は、消費税が課税されない「非課税取引」・「不課税取引」とは課税の取り扱いが大きく異なります。よって輸出免税取引を「非課税取引」・「不課税取引」と混同した場合や、「輸出免税取引」を理解していなかった場合、次のようなミスが発生し、損失を被ってしまうことがありますので注意してください。
 

例1:
資本金が1千万円未満の事業者は、開業当初2年間は消費税が免除されるため、当初2年間は消費税の申告をしなかった。しかし輸出をメインとしている事業者は課税売上にかかる消費税よりも課税仕入にかかる消費税のほうが大きいケースも多く、「課税事業者」を選択する手続きをしていれば消費税の還付を受けることができたのに、手続きをしなかったため、消費税の還付を受けることができなかった。


例2:
「原則課税方式」を適用すれば消費税の還付を受けることができたのに、「簡易課税の届出書」を提出してしまい、消費税の還付を受けることができなかった。


7.さいごに
 最近は個人・小規模事業者の輸出入取引が増えてきました。
海外取引の税務は税務調査でも特にチェックされやすいので、取引内容・事実関係の確認、証拠書類の保存には特に注意していただきたいと思います。







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